世界最大の暗号通貨取引所であるバイナンスの画面。暗号通貨へのアクセスをもてるかどうか、が世界最悪のインフレが続くベネズエラで生活するうえでは重要な意味をもつ
ペイパルは手数料が高い
ベネズエラへ海外からドルで送金するポピュラーな方法は、暗号通貨を使う以外にも2つある。
1つは「ペイパル」だ。ただ難点は、日本から送金する場合、日本円からドルへの換金レートが悪いこと。これに加えて、ベネズエラ国内でペイパルのドルで買い物をする場合、手数料として、価格の5.4%+30セント(約40円)がとられる。こうした目減りは、ギリギリの生活を送る庶民にとってはとてつもなく大きい。
もう1つは、個人間(P2P)送金決済の「ゼル」だ。ゼルを利用するには通常、米国の銀行口座が必要となる。ただワイズやAirTMといった送金・P2P取引サービスに口座(デジタルウォレット)を持っていれば、ベネズエラでも使えるという。
ドルではないが、実はベネズエラにはもう1つ、ペトロという暗号通貨がある。資金調達を狙って2018年にベネズエラ政府が発行したものだ。1ペトロは60ドル。埋蔵石油・鉱物が価値を担保する。
だがペトロはほとんど使われていないのが現状だ。エレナさんは「ペトロはきちんと機能しているとは思うけれど、あまりポピュラーではない。ペトロを発行した政府のことを多くのベネズエラ人は信用していないから」と打ち明ける。