人身取引の被害も減らすのが教育
マイルストーン・プロジェクトでは、子どもたちが安全に過ごせる学校の再建を目指す。ワールド・ビジョン・ジャパンは2022年もシリア北西部でこのプロジェクトを実施した。このとき集まった4200万円(一口100万円)をもとに、空爆で破壊された5つの学校を再建。トイレも修復し、いす、机などの備品もそろえた。「子どもと教職員を合わせて4000人以上が恩恵を受けた」(アフメドさん)
再建した学校に通うひとり、小学5年生のディナさん(11歳)は「勉強することは、より良い未来への入り口になる」と喜ぶ。
実はディナさんは7歳の時、通っていた小学校が爆撃され、目の前で仲良しの友だちを失った。自身も飛び散ったガラスの破片でけがを負い、深いトラウマを抱えていたという。
辛い過去を乗り越えられたのは、ディナさんの父親のおかげだ。娘の将来を思い、ディナさんに教育を受けさせると決めた。学校に行くのを怖がる彼女を毎日励まし続けたという。
「お父さんは毎朝、『未来のシリアを立て直す、小さなエンジニアのディナ』と言って私を起こしてくれた」(ディナさん)
父親からの愛情を受け、ディナさんは復学。「将来はエンジニアになる」と目を輝かせる。
渡邉さんはマイルストーン・プロジェクトの説明会の最後にこう訴えた。「読み書きできないままで10歳を過ぎると、(肉体労働など)厳しい仕事に就く道しかなくなる。児童婚、人身取引、性的搾取のリスクもある。1人でも多くの子どもが学校に通えるよう、力を貸してほしい」
マイルストーン・プロジェクトは、一口100万円からの寄付で、目標は4000万円(40口)。4月30日まで募集する。2019年に始まったこのプロジェクトには延べ119人が参加している。