地震とがんで二重苦のシリア人少年をチームベコが助けるワケ、「人としてどう動くかが問われる」

夜寝ている間に家が崩れてくるのを恐れ、市場の中で寝るところを探すサラーハくん一家

制裁で苦しむのは市民

チームベコは今後もサラーハくんにお金を送りつづける予定だ。佐藤さんは「最近は6万円を送った。家が倒壊した、サラーハくんの親せきに渡してもらった。泥棒にとられないか心配なので、(一度に)大金は送らないようにしている」と言う。

チームベコが直接サラーハくんにお金を送る理由は、アレッポには国際機関による援助が届きにくいと感じるからだ。

「今回の大地震のような大きな災害が起きたとき、普通ならいろんなNGOのロゴマークを付けた人が援助に入る。だが写真を見る限り、その姿がない」(佐藤さん)

背景にあるのは、シリアのアサド政権に対する米国の経済制裁だ。シリア紛争では、復興にかかわる国際援助も対象になった。

米国は、地震発生から180日間に限って経済制裁を解除した。佐藤さんは「緊急事態だから解除しただけ。これからどうなるかはまだわからない」と危惧する。

経済制裁下にあるシリアの人たちへの援助について、佐藤さんはこう力を込める。

「米国はアサド大統領を苦しめたいのだろうが、結果的に苦しめられているのはサラーハくんのような何の罪もない一般市民。『今この瞬間、お金がなければ死んでしまう』という状況が普通にある。そんな状況にある人たちを(公的資金を活動に使う)組織が援助できないなら、個人でお金を出してあげることに迷ってはいけない。人としてどう動くかがいま問われている」

ダマスカスの病院に行き、がんの検査を受け、その後に大好きなファストフードを食べるサラーハくん

ダマスカスの病院に行き、がんの検査を受け、その後に大好きなファストフードを食べるサラーハくん

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