前進党のロゴマークの前で笑顔を見せるプティタ・チャイアヌン候補。チェンマイ県の第4小選挙区から出馬する
完全な立憲君主制めざす
前進党の公約の中で注目すべきは、「不敬罪」の罰則を軽くする法改正だ。
不敬罪とは王室への侮辱や中傷を禁じる刑法。違反した者は3~15年の禁固刑が科される。重罪に加えて、起訴される基準が不明確なため、国内外から批判されてきた。
「不敬罪が適用されるケースが2020年以降、増えている。デモに参加した14歳の子どもが起訴されたり、国王に関するアンケートを実施した女子大生が拘束されたりした。不敬罪が言論弾圧に使われている」
プティタさんはこう問題視する。
前進党はまず、不敬罪の罰を1年以内の禁固刑または罰金にすることを目指す。また、これまで誰もが不敬罪を通報できていたものを、タイ王室庁のみに限定。これにより不敬罪が政治の道具として使われるのを防ごうというわけだ。
前進党は2021年2月にも不敬罪の改正案を議会に提出した。その時は議題に上げらなかったが、前進党は今も諦めていない。
「政治的な発言をして拘束されるのは間違っている。今回の選挙で前進党が躍進すれば、不敬罪の罰則が軽くすることができる。将来的には廃止する」
だが前進党以外の政党は、不敬罪など王室がかかわる法律の改正に後ろ向きだ。罪状を重くしようとする政党さえある。最大野党のタイ貢献党も、不敬罪には口を閉ざす。王室主義者やナショナリストを刺激したくないからだ。
それに対してプティタさんはこう述べる。
「前進党は王室を廃止したいのではない。むしろ守りたい。もし民主的な憲法ができれば、国王が政治の道具にされることもない。尊敬を失うこともない。私たちは日本のような、完全な立憲君主制にしたいだけなんだ」(終わり)