
韓国を抑えて4位に!
鈴木さんが今目指しているのが、フィリピン女子ソフトボール代表の日本遠征だ。
「ブルーガールズ」の異名をもつフィリピン女子ソフトボールチームはこの4月、韓国で開催されたアジアカップで4位に入った。7月にイタリアで行われるワールドカップ予選の出場権も獲得。東アジアの強豪・韓国を抑えての快挙だった。
「選手たちはアジアカップで強豪国とも渡り合えると大きな自信をもった。でも足りないのが国際試合の経験。彼女たちを日本に連れて行って、大学や実業団のチームと試合をさせたい。世界でもトップクラスの日本のチームと試合ができれば、もっとうまくなるはず」
鈴木さんは現在、母校や実業団チームなどと片っ端から連絡を取り、試合をしてくれるよう頼み込んでいる。また安く泊まれる宿泊先も探している。
「日本に遠征したらソフトボールの指導だけじゃなく、通訳から現地のサポートまでチームのためになんでもする」
英語ができないとバカにされた
ソフトボールの指導に全力を注ぐ鈴木さんだが、目指すのは選手の競技力の向上だけではない。ソフトボールをツールとして選手たちを世界に送り出し、彼らの将来の可能性を広げたいと考えている。
鈴木さんがこう思うのは、自身の経験からだ。
鈴木さんは大学の2年生の時に交換留学生として1年間、タイに留学した。場所はバンコクにある名門チュラロンコン大学。ほとんどの授業が英語だった。
これまでソフトボール一筋だった鈴木さんは、英語での授業についていけなかった。留学生向けのタイ語の授業の単位はとれたものの、いくつかの座学の授業は落としてしまった。
「タイの大学生からは『日本人は英語ができない』とばかにされ、悔しかった」
鈴木さんは当時をこう振り返る。
だが鈴木さんは「留学を失敗にしたくない」と奮起。これまでソフトボールに使っていたエネルギーを英語の勉強に注ぐ。すると英語の成績がみるみる向上。タイに留学する前に200点台だったTOEICの成績は、国士舘大学を卒業する時は890点へとアップした。この成功体験が現在の仕事の原点となっている。
鈴木さんはフィリピンのソフトボール選手を育て、将来はスポーツ特待生として日本に留学させたいと思っている。これがフィリピンのソフトボールの振興になると同時に、選手自身の成長につながると確信するからだ。
鈴木さんはこうはにかむ。
「私の本名の『Masaya』はタガログ語で『幸せ(Happy)』という意味。選手からコーチハッピーと呼ばれている。その名前に恥じないよう、ソフトボールで多くの選手を幸せにしたい」