シャンティ国際ボランティア会が東部の山岳地帯で運営する「コミュニティベースの教室」。民家の一画を利用する。読み聞かせには、日本を含む世界の名作やシャンティが独自に出版した絵本を使う(写真提供:シャンティ国際ボランティア会)
2600万人が食糧難
ただタリバンは女子が初等教育(小学校)を受けることは容認する。それでもアフガニスタンの女子児童の就学率は依然として低い。タリバンが政権をとる前でさえ、未就学の児童は370万人もいた。その6割を占めるのは女子で、220万人を超える。
就学率が低い主な原因は貧困だ。SVAの山本英里事務局長によると、アフガニスタンの全人口の7〜8割に相当する2600万人が貧困による食料難に直面。うち400万人の子どもが慢性的な栄養失調に苦しむ。
「お兄ちゃんと弟は学校(や幼稚園)に行けるのに、どうして私はだめなの」。そう訴えるのは6歳の女の子だ。貧しい家庭では教育の優先度が低い。なけなしのお金があっても男児の教育費にあて、女児は家の仕事をさせられるという。
こうした問題を少しでも解消しようとSVAは2021年7月から、アフガニスタン東部の山岳地帯に「コミュニティベースの教室」(地域の仮設教室)を設置し始めた。村の長老の家やモスクの一画を教室にして、公立の学校に通えなくなった児童に学びの場を提供する。教室は今では500カ所に広がった。
対象となるのは主に6〜9歳の児童。1クラスの人数は20〜30人で、合計1万5000人(うち女子は9513人)が通う。授業を受け持つのは、研修を受けた500人の教師だ。公立の学校と同じカリキュラムを組み、編入できる体制を整える。
この活動の意義について、アフガニスタン事務所副所長のジャドさん(仮名)は「この地域は、学校まで6キロ以上離れている山の僻地。旧政権下でも教育は届いていなかった。通いやすい教室ができて住民は本当に喜んでいる。中等教育以上もつくってほしいとの要望もある」と話す。