2023年世界ジェンダー格差指数、途上国からはニカラグアとナミビアがトップ10

世界経済フォーラムが発表した「世界ジェンダー格差報告書2023」

世界経済フォーラム(WEF)は6月21日、146カ国を調査対象とする2023年版のグローバルジェンダーギャップ報告書を発表した。男女格差が最も少ない国(トップ)は14年連続で北欧のアイスランド。最下位はアフガニスタンだった。途上国からはトップ10に、中米のニカラグアと南部アフリカのナミビアが入った。

途上国1位は反米左派の独裁国

ジェンダーギャップ指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野から算出する。男女が完全に平等であればスコアは1.0で、ゼロに近づくほど格差が大きい。世界全体では0.684(達成率は68.4%)だ。WEFによると完全な男女平等を達成した国はまだなく、達成まであと131年かかる。

男女平等に1番近い分野は健康(スコアは0.96)。教育(0.952)が僅差で続く。経済は0.601。足を引っ張るのは政治で、スコアは0.221と際立って低い。

ランキングを途上国に絞るとトップはニカラグア(全体では7位)。これに、ナミビア(8位)、ルワンダ(12位)、コスタリカ(14位)、フィリピン(16位)、アルバニア(17位)、モルドバ(19位)、南アフリカ共和国(20位)、ジャマイカ(24位)、モザンビーク(25位)が続く。

途上国トップ10を地域別にみると、中米・カリブ海から3カ国がランクイン。男女平等の達成率は74.3%(スコアは0.743)で、これは欧州、北米に次いで3番目に高い地域だった。サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカからは4カ国が入った。

途上国トップのニカラグアのスコアは0.811。順位は前年から1つ上げた。左派ゲリラ「サンディニスタ民族解放戦線」の指導者で、独裁色を強めるダニエル・オルテガ氏が16年ぶりに大統領に就いた翌年の2008年、ニカラグアは国政の女性議員に一定数の議席を割り当てる制度(クオータ制)を導入した。国会議員(一院制)の48.3%、閣僚の37.5%が女性だ。

ニカラグアは中南米・カリブ海ではハイチの次に貧しい「重債務貧困国」の1つ。1人当たり国内総生産(GDP)は2386ドルと、日本(3万3821ドル)の14分の1。国家として海外からの援助に依存する事情もあり、国際社会の潮流に合わせてジェンダー平等を推進しているとの見方もできそうだ。

ルワンダは下院議員の6割が女性

アフリカのトップはナミビア(スコアは0.802)だ。 与党である「東西アフリカ人民機構(SWAPO)」が女性の国会議員の枠を50%にするクオータ制を自発的に導入したこともあって、国会議員の44.2%、閣僚の31.58%を女性が占める。2015年にはサーラ・クーゴンゲルワ氏が同国で初めて女性として首相に就任。現在も務める。

ナミビアはまた、経済の分野でも女性の進出は顕著だ。女性の労働参加率は55.42%、企業の管理職に女性が占める比率も43.57%と高い。

ナミビアで男女平等が進んだきっかけとなったのは、アパルトヘイト(人種隔離)体制の崩壊だった。隣国の南アフリカ共和国から1990年に独立したと同時に施行された憲法は、人種間に限らず、あらゆる差別を撤廃するためのアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)をとると明記する。男女差別の撤廃は国策だ。

途上国で3位のルワンダ(スコアは0.794)は全体では12位。前年の6位から順位を6つ下げたが、依然として「男女平等先進国」の1つだ。2003年に制定された憲法は、公的機関のすべての役職に女性が占める割合を少なくとも3割にするよう定める。国会議員の38.7%、下院議員に限ると6割が女性。閣僚の47.6%も女性だ。

アジアから唯一途上国トップ10入りしたのは、全体で16位のフィリピン(スコアは0.791)。女性閣僚の割合は26.3%。専門性をもつ労働者に女性が占める割合も42.17%と半分に届く勢いだ。ただ女性の所得は男性の7割に過ぎないという課題も残る。

ジェンダーギャップ指数のトップ40。上位の国は女性の国家元首を出す傾向が強い。リトアニアが今回トップ10入りした大きな要因も、イングリダ・シモニータ氏(女性)が2020年に首相となり、国会議員に占める女性の割合も急増したこと

ジェンダーギャップ指数のトップ40。上位の国は女性の国家元首を出す傾向が強い。リトアニアが今回トップ10入りした大きな要因も、イングリダ・シモニータ氏(女性)が2020年に首相となり、国会議員に占める女性の割合も急増したこと

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