在日ミャンマー人で、「ミャンマーの平和を創る会」の共同代表を務める大槻美咲さんはこのほど、軍事クーデターから2年超経ったミャンマーに対して「日本からできることは何か」を考えるイベント(主催:ganas)に登壇した。このなかで「軍政からミャンマー人が今もなお弾圧を受けている現実をSNSでシェアして、日本人の間でもミャンマーを応援する雰囲気をつくってほしい」と訴えた。
2回のCFで2625万円集める
大槻さんはまず、平和を創る会が手がける3つの分野の活動について説明した。「ミャンマー国内での人道支援」「日本国内での留学生・技能実習生支援」「ミャンマーへの関心を持ってもらうための啓発」だ。
人道支援の分野では、クラウドファンディング(CF)を使って総額2625万8000円を集めた。1回目は、平和を創る会の前身ともいえる在日ミャンマー人有志グループが2022年3~4月に手がけたもので、第一目標の1000万円をクリア。最終的な金額は1566万6000円にのぼった。2回目は、平和を創る会が1~3月に実施し、当初の目標金額の500万円を大幅に超える1059万2000円を獲得したものだ。
この資金をもとに平和を創る会は、ミャンマー国内で9つのプロジェクトを2回にわたって展開した。国内避難民(IDP)が最も多いザガイン管区やマグウェ管区などを中心に全国各地のIDPキャンプへ、不足するコメなどの食料や医療品を最優先で届けた。大槻さんは「支援者のみんなや仲間に感謝の気持ちでいっぱいだ。ミャンマーの避難民の命と未来をつなげることができて大変うれしい」と語る。
ただ食料や医療支援だけでは十分ではない。平和を創る会によれば、タイとの国境に近いミャンマー東部にあるIDPキャンプでの暮らしは悲惨だという。「避難民らは、葉っぱの屋根ともろい土壁でできた粗末な小屋で雨風をしのぐ。雨季は安全ではない。仮設診療所の屋根はブルーシート1枚だけ。火事で燃える危険もある」(大槻さん)
IDPキャンプではまた、教育の場所も教師も足りない。平和を創る会の聞き取り調査によると、キャンプ内で暮らす子ども(幼児から高校生まで)の数は約1000人と、軍事クーデターが起きる前の450人から2倍以上に増えた。また、国軍兵士に家族が殺された場面を目の当たりにしてトラウマを抱える子どもも少なくないという。「精神的なケアを要する子どもも多い」と大槻さんは懸念する。