“普通の人”になれないなら、すごい人になってやる――。流ちょうな日本語でこう語るのは、コロンビア第2の都市メデジンでグラフィックデザイナーとして活動するコロンビア人のカミロ・アグデロさん(28歳)だ。彼はゲイ。幼いころからいじめを受けてきた彼は「人より優れることが(ゲイ差別から)自分を守る術だった」と淡々と振り返る。
カトリックは同性愛を受け入れない
アグデロさんはコロンビア西部のペレイラで育った。彼にとって小学校から高校までは地獄そのものだったという。差別を恐れてゲイであることを隠していたが、仕草が男性らしくないことや、好きな女の子の話をしないことからバレてしまい「あいつはマリカ(オカマ)だから近付くな」と言いふらされた。その結果、クラスメイトの大半は離れていく。誰にも心を開けず、ひとりぼっちの日々が始まった。
何かできないことがあると「ゲイだからでしょ」と周りから陰口を叩かれる。それが嫌で、学年で10位以内の成績を常にキープするなど人一倍の努力をした。また、ひとりぼっちのため、休み時間は絵を描いて過ごす日々。そうするうちに美術をもっと学びたいと思うようになった。
そんな彼に転機が訪れたのは念願の美術大学に進学できた時だ。奇抜なファッションをしたり、LGBTQ+についてオープンに話したりする学生と出会い「やっと檻から出られた」。こんな場所なら「自分を受け入れてくれるかも」と期待を抱くようになった。
周囲の環境が変わったことで、カミングアウトすることを決心した。初めてカミングアウトをした相手は、家族でも親友でもなく、さほど仲良くない友人。その理由は、大切な人が離れていってしまうことを恐れたからだ。しかし友人の反応は、不安とは裏腹に「なんだそんなことか」とあまりにもあっさりしたものだったという。彼は当時のことを思い出して「肩から重い石が落ちたように(スペイン語で肩の荷が下りるという意味)楽になった」とにこやかに話す。