直径1センチの正露丸
チベット医療では、初診の患者に対してまず、食事をはじめ生活スタイルを改善するためのアドバイスをする。私の場合は、辛いものや熱いものは控えて、ティーパ(熱エネルギー)を下げる効果のあるきゅうりを食べると良いとのアドバイスをもらった。
だが、日本から遠く離れたラダックのチベット医療の診療所をわざわざ訪ねたのに、アドバイスだけをもらって帰るのはもったいない。そこで私はレクシェイ医師に、「薬も処方してほしい」とすがりついた。
やれやれといった表情でレクシェイ医師は2つの薬を処方してくれた。ひとつはダシェル。37種類の薬草を混ぜて作ったこの薬は、肝臓を健康に保つ効果がある。もうひとつはツァングラという睡眠を促進する薬。二日酔いで寝不足の私にピッタリ。気になるのは本当に効くかどうかだ。
ダシェルもツァングラも直径1センチメートルの丸薬。試しにダシェルを口の中に放り込み、噛み潰してみた。すると口いっぱいに苦みが広がる。味は昔の正露丸に近い。飲みやすさは皆無。良薬口に苦しといったところか。
3日分の薬代も含めて私が払ったのはたったの180ルピー(約320円)。かなりお得だ。
チベット医療では、マッサージや鍼灸といった処置もするが、患者の治療経過を見ながら進めるという。
「チベット医療は長期的でホリスティックな(全体を考える)医療だ。定期的に患者を診断し、回復具合をみながら処方を変えていく」
こう話すレクシェイ医師の診断時間は、1人の患者につき10分から長くて30分。短い診断を継続して少しずつ治療していくのがチベット医療の肝だ。
レクシェイ医師によると、食生活の改善と鍼灸で、てんかんは治るという。またチベット医療と西洋医療を併用して、がんが治ったケースもあると聞く。