コロンビア・メデジンのスラム「コムナ13」で活動する、「自立する女性の会」(AMI)の代表を務めるマリア・モスケーリャ・ロンドーニョさん。現在は、生活支援、学習支援、心理カウンセラーの協力を受けて心の病気を癒す支援に取り組む。また自身が収監された経験から、受刑者にシャンプーやせっけんなどの衛生用品や衣類を届けるなど、刑務所の環境を改善する活動も手がける
2人の息子は虐待を受けていた
モスケーラ・ロンドーニョさんが留置所と刑務所にいるあいだ、当時12歳と13歳の2人の息子が警察やパラミリタレスから虐待を受けていた。
「その事実を息子たちは私にずっと隠していた。つい半年前に打ち明けられた。警察やパラミリタレスの兵士が毎日家に来て、『お前の母親を殺す』と息子たちを脅したり、殴ったりした。警察やパラミリタレスは、私が罪を犯した物証を捏造するために、息子2人に拳銃を与えようとした。それを拒否したから、息子たちは殴られた」
モスケーラ・ロンドーニョさんは逮捕から11日後、釈放された。メデジンの弁護士団「人権のための学際グループ」(GIDH)が米ワシントンDCやコスタリカで国軍や警察が犯してきた人権侵害を訴えたことで無実が証明されたからだ。
釈放から21年。モスケーラ・ロンドーニョさんが負ったトラウマはいまだに消えない。「起きたことすべて胸が痛い。人権侵害の苦しみを忘れることはない」。この言葉がオリオン作戦で受けた傷の深さを物語る。
モスケーラ・ロンドーニョさんが逮捕されたケースは、オリオン作戦の被害のほんの一例だ。「私や息子以外にも理不尽に逮捕されたり、暴力を受けたりした人は多くいる。なかには殺された人も」と言う。
モスケーラ・ロンドーニョさんはいま、コムナ13の住民と協力して、GIDHを通してコロンビア政府に対し、オリオン作戦を実行した際に犯した人権侵害を認め、謝罪するよう訴えている。「被害者が受けた心の傷を治すためだ。政府からの謝罪で、完全に傷を癒やすことは無理だとしても、傷穴を塞ぐことはできる。そのためにも声を上げ続ける」と言葉に力を込めた。
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