助成金でシェルター完成
だが宮村さんにはそれまでアパレル会社で働いたことも、また縫製の仕事をしたこともなかった。
「最初は手探りの状態だった」
こう話す宮村さんはゲヌを立ち上げた2020年、まずは自分で商品を作り始めた。日本の知り合いから生地を買い付け、ミシンを使って自分でポーチを縫って売った。2年目からは、生地をアフリカから仕入れ、縫製は日本の業者に依頼。結果、アフリカのテイストを入れた質の高い商品を作ることに成功した。
宮村さんはまた、多くの日本の縫製工場とネットワークを開拓し、商品ごとに依頼先を選別した。これにより商品のバラエティーが増加。ゲヌが今そろえるのは、ワンピースやスカートなどのレディースファッション、メンズのシャツ、トートバッグをはじめとするバッグ類、折り畳み傘、ハンカチ、ランチョンマットなど多岐にわたる。
だが売り上げの寄付だけを頼りにしては、いつまで経ってもシェルターは完成しない。宮村さんはゲヌの事業を進めると同時に、助成金の申請にも動いた。2022年には、シェルターの建設が外務省の草の根無償資金協力事業に採択され1000万円を獲得。その助成金を使って2023年3月、ついにシェルター「マム・ジャーラ・ジャッロ」を完成させた。マム・ジャーラ・ジャッロはコイタさんの母親の名前だ。2009年の着工から14年が経っていた。
2階建てのシェルターには避難してきた女性が寝泊まりできる部屋が10ある。隣の棟にはダイニングルームとキッチンも。太陽光パネルも設置し、水道と電気も通した。
宮村さんは現在、コイタさんをはじめ、ラパラーブルのスタッフと一緒にシェルターの年間予算を算出中。それが終わり次第、シェルターに女性を受け入れる予定だ。
クラファンでファン拡大
「シェルターを継続的に運営するには、ゲヌの売り上げを伸ばさなければならない」
こう話す宮村さんは2023年8月からクラウドファンディングを開始した。宮村さんやコイタさんの活動を知ってもらいラパラーブルへの寄付を増やすと同時に、ゲヌの商品をリターンにして売り上げを伸ばす狙いだ。
このクラウドファンディングに合わせて、コートジボワールでアフリカ布を作るローカル企業UNIWAXにゲヌ独自のデザインを考案してもらった。このデザインを用いたハンカチやマグカップ、フレアスカートといった新商品もクラウドファンディングのリターンに入れた。
「商品のほとんどを今は日本で作っているけれど、将来的にはセネガルでも生産できるようにする。いつかはメイド・イン・セネガルのブランドとして世界に進出したい」
宮村さんはこう目を輝かせた。(終わり)