日本のNPOと企業がタッグを組み、1000台を目標にウクライナに車いすを届けている。同国ではロシアの侵攻の影響から2万5000人が手足を失ったとされ、車いす不足が深刻だ。ウクライナの団体との橋渡し役を務める英国在住の国際ジャーナリスト、木村正人さんは「年内で目標の1000台を達成する。ウクライナ人に寄り添う気持ちを届けたい」と話す。
1年ぶりにベットから動けた
木村さんは10月26日、大和日英基金が主催したオンライン講演会に登壇した。自身も参加する「オールジャパンでウクライナに送ろう」プロジェクトの主な構成メンバーは、中古の車いすを整備して海外に送る日本のNPO4団体と、日本郵船をはじめとする海運会社だ。まだ使える車いすをNPOが整備し、海上輸送費は海運会社が負担する。
木村さんは「現在までに計815台の車いすが海を渡った。年末に第5便が出れば、計1065台を届けられる」と進ちょく状況を説明する。
ウクライナ側で受け入れを担うのは、ロシアの侵攻後にポーランドに逃れたウクライナ人が立ち上げた医療支援団体「フューチャー・フォー・ウクライナ(FFU)」。首都キーウの国立子ども病院、キーウ近郊のイバンキフ村にある高齢者介護施設、西部テルノピリ州の公立病院や児童養護施設、北東部ハルキウ州の地域センターなど、各地の公共施設に車いすを届ける。
木村さんは2023年4月にウクライナへ飛び、取材を兼ねて支援先を回った。訪問先の一つがテルノピリの州立病院。高価な車いすは侵攻前から十分に行き渡っていなかったうえ、東部や南部の前線から530万人が西部に逃げてきたという。
「リハビリの器具も足りない。寝たきりの状態が続き、回復が遅れる人が増えていた。まるで戦時病院だった」(木村さん)
そうした状況で一筋の光となったのが、アルミ製で軽く操作性に優れた日本製の車いすだ。メンテナンスをすればあと30年は乗れる。長持ちするところも喜ばれた。
「この車いすに乗ると、遠い日本の誰かが自分を思ってくれると実感できる。心の支援が嬉しいとの声をもらった。前線のハルキウでは、ベットから1年ぶりに動けた人もいたと聞いた」と木村さんは振り返る。