最大の問題は輸送費
日本のNPOや企業をFFUにつなげ、プロジェクトを進めてきた木村さん。妻の史子さんとともに人道支援にかかわるようになったきっかけは、2022年5月のポーランド訪問だった。
「車いす500台がいま必要です」。長野県の福祉用具会社が開発した車いすの移動を補助する器具をポーランドに逃れたウクライナ難民に届ける活動を手伝った際、FFUの関係者からこう要請を受けた。その言葉を聞いた木村夫婦は「やってみよう」と決めた。
最大の問題は輸送費だ。2022年6月時点のコンテナ代は、現在のおよそ10倍だった。自腹を切ろうとも考えたが、日本郵船で働く知人の言葉が未来を変えた。「(日本郵船の)社内に無償支援の制度がある」。木村さんの仲介でFFUが「純粋な医療行為、人道支援」との承認を得て、日本郵船の協力を取り付けた。
木村さんはその後、車いすの提供元を日本中で探した。真っ先に応えてくれたのが、中古の車いすを整備してパキスタンをはじめとする途上国に送る「さくら・車いすプロジェクト」広島支所長の桂達也さんだ。自身も下半身不随の重度障がいをもつ桂さんが用意したのは145台。待望の第1便が2022年12月に神戸港を出航した。
続く第2便は、モンゴルに車いすを贈ったことのある「希望の車いす」(東京都練馬区)、「海外に子ども用車椅子を送る会」(東京都福生市)、「『飛んでけ!車いす』の会」(札幌市)が計150台を提供。東京港を2023年2月に出港した。商船三井と三協が無償で輸送を引き受けた。
「第2便のコンテナに書かれていたのは『ONE』の文字。日本がひとつになってウクライナに車いすを届ける象徴だと感じた。(500台の追加要請を加えた)1000台を届けられるのも、ひとえにNPOと企業のおかげだ」と木村さんは感謝する。