西アフリカ・ベナン南西部のクッフォ県ザフィー村に、見習いを受け入れるオーダーメイドのサンダル屋がある。店名は「ボースティール」(「きれいなスタイル」の意)。店主のボセ・ルックさん(32)は「この村の子どもにとって、手に職をつけられる学校は家から遠い。お金がないと通えない」と現状を説明する。貧しい子どもでも職人になれる仕組みが、ベナンで主流となっている職人見習い制度だ。
学校に通えなかった障がい者も
ボースティールが受け入れている見習いは、十代半ばを中心とする5人。うちひとりは足に障がいをもち、少し離れた中学・高校に通えなかった。「(その代わりにここへ)親に連れてこられた」と言う。別のひとりは靴が好きで「靴の職人」になる夢をもつ。
勤務するのは、毎週月曜から土曜日までの6日間。時間は朝の7時から夜の7時までだ。店に出たらまず掃除をする。その後は夜まで客が来るのを待つ。客がひとりも来ない日もある。空き時間が多いとはいえ、サンダルの革の部分を縫う機械や革の材料が足りないため、サンダルづくりを練習する機会はめったにない。修行期間は3年かかるという。
それでも子どもたちがサンダル屋に見習いに来るのには理由がある。ベナンではオーダーメイドのサンダルが人気で「イケている」からだ。おしゃれな革のサンダルや革靴はフォーマルな場面で使える。
ボースティールのサンダルの価格は一足7000CFAフラン(約1400円)。ワニや羊の革を輸入しオーダーメイドで作るため、ベナンの一般的なビニールサンダルのおよそ1.5倍と高い。
それもあってか注文は少ない。サンダルの年間の売り上げはたったの20万CFAフラン(約4万円)。繁忙期は正月や8月1日の独立記念日など年に4回程度あるが、それ以外の売り上げはゼロに近いという。
ボセさんは「これでは家族(妻、2人の息子)で食べていけない。年間の生活費は最低36万CFAフラン(約7万2000円)必要だ」と言う。
なんとか生計を立てられているのは、見習いを受け入れているからだ。見習いから3年分の研修費として一人につき20万CFAフラン(約4万円)を受け取る。ボセさんにとっては収入の足しになり、見習いにとっては3年後に自分のサンダル屋を出せる。双方にメリットがある仕組みだ。