
ベナン南西部のクッフォ県で活動するNGOサリュトタ(SaluTota)がこのほど、最初のプロジェクトを立ち上げた。場所は、人口およそ1000人の同県ニベ村だ。11人の女性に食用ウサギを無償で提供し、彼女らがそれを育てて売るというもの。サリュトタ副代表のエケ陽子(45)さんは「モノやお金を渡すのではなく、ビジネスで彼らの自立を促したい」と意気込む。
どんどん生まれ稼ぎも倍ゲーム?
サリュトタの活動目的は、ベナン人の女性に仕事を作ることだ。
ウサギのプロジェクトでは、ニベ村のなかでも生活がとくに苦しい女性をパートナー(ウサギを飼育する人)に11人選び、ウサギをつがいで提供した。
ウサギの飼育には細かい手間がかかる。清潔な状態を保たないとウサギは死んでしまう。このため飲み水は毎日変えないといけない。家の中に、木の枝を使って、一羽ずつ分けて小屋を作る。妊娠させるときはオスとメスを同じ小屋に入れる、などだ。
11人のパートナーに向けてサリュトタが開催したレクチャーでは、オス・メスの見分け方、成長の仕方、えさの種類(外に生えている草と残飯)、病気になった時の治療法などを教えた。
こうしたことに気を付けながら11人はウサギを育て、繁殖したら親ウサギを売り、稼ぎを得る。
1羽の値段は約5000CFAフラン(約1200円)。価格帯はベナン人がよく食べるニワトリより少し高い。ベナンではウサギの肉は誕生日などの特別な時に食べるという。
親ウサギは毎月、子どもを5~8羽生み、成育するまで4~5カ月しかかからない。しかも、家の近くに生えている草や村人が食べるキャッサバの皮をえさにするため、えさ代はほぼゼロ。うまくいけば、コストなしで安定的にどんどん収入が増えていく、という青写真をサリュトタは描く。
妹のウサギを姉が奪う
ただトラブルもあった。
レクチャーが終わってウサギを渡す日に、ひとりの女性が来られなくなり、代わりに姉がやってきた。「妹に渡しておく」と言うので、ウサギを託した。しばらく経ってエケさんがニベ村にようすを見に行くと、レクチャーを受けていない姉の家にウサギがいる。適切な飼育ができず1羽は死んでしまった。ウサギを騙し取られた妹は泣き寝入りしたという。
11人の女性がウサギの飼育を開始してまだ1カ月。この活動が今後うまくいくかどうかはわからない。エケさんは「予想しない問題が起こることも多い。定期的な訪問は欠かせない」と気を引き締める。