
ウサギの次は「せっけん」
サリュトタが計画する次のプロジェクトは伝統的な白くて丸いせっけん作りだ。原料は赤ヤシの油と苛性ソーダのみ。ブルキナファソやマリ、ニジェールなどでも人気が高く、売りたいという。
クッフォ県内のニベ村、サントル村、ラダ村から女性3人ずつ計9人にせっけん作りの道具を渡し、レクチャーを行う予定だ。せっけんは1個200CFAフラン(約50円)で売れるという。「せっけんは1回で50個は作れる」(エケさん)
ここで壁となるのは資金だ。人数分のせっけん作りの道具代や講師へのレクチャー代が必要だが、定期的な収入源がなければその金額を蓄えるのも時間がかかる。
サリュトタは現在、トタ村にあるエケさん一家の自宅で、日本からのホームステイを受け入れている。宿泊、食事に加えて、ブードゥー教のセレモニー、田舎体験、ものづくり体験などのアクティビティをつけることができる。
ホームステイ業の収入がNGOの活動資金となる。1カ月平均2人がホームステイにやって来る。「多くの日本人にホームステイに来てもらい、ベナンを、サリュトタの活動を知ってもらいたい」とエケさんは話す。
ベナンに骨を埋める
サリュトタを立ち上げたエケさんは2013~15年、青年海外協力隊員(職種:看護師)としてベナンのトタ村で活動した。赴任中に出会ったベナン人の夫と結婚。日本にその後帰国したが、2023年3月にトタ村に戻り、定住すると決めた。現在は夫と2人の息子との4人暮らしだ。
エケさんによると、ベナン人と結婚した日本人は周りに8人いるが、ベナンに残るのはエケさん夫婦のみ。「協力隊時代にできなかったことがたくさんある。ベナン人と一緒に何かをしたいという思いを実現したい」と話す。
サリュトタのメンバーは7人。エケ陽子さん以外は全員ベナン人だ。立ち上げ当初は、ベナン独自の手続き、ベナン人との仕事の仕方、仕事の振り方などわからないことだらけだった。活動資金の100万CFAフラン(約25万円)をメンバーの一人に騙し取られることもあった。
困難にぶつかりながらもエケさんの気持ちは変わらない。「困っている人たちにモノやお金を渡すのではなく、彼らが自立して稼げる力を育てたい」とエケさんは力強く語る。