“貧貧支援”に限界? 支え合い文化のあるベナンでも助けられない

自分が建てた小屋の中ではにかむエリザベスさん。自分は食べなくても3歳の孫を食べさせるのに必死だ

ベナン南西部のクッフォ県ニベ村に、掘っ立て小屋のような家に娘1人、孫1人(失踪した息子の子ども)と3人で暮らす女性がいる。エリザベス・ホメフさん(53)だ。8人の子どもをもうけたものの、1人は早死にし、1人は脳の病気に。残りの5人の子どもは自分の生活で精一杯。母のエリザベスさんを助けるどころではない。家族やコミュニティの絆が強いとされるベナンの村だが、助け合いにも限界がある。

一家を襲った悲劇

エリザベスさんはかつて、夫、4人の息子、4人の娘の10人家族でニベ村で暮らしていた。ところが6年前に夫と死別。4女は18歳でこの世を去った。さらに嵐で家が壊れると一家はいよいよ困窮することになる。

悲運は続く。3年前に次男のサムウェルさん(31)の1人目の子どもが生れたとき、妻(子どもの母)が命を落とした。ショックを受けた夫のサムウェルさんは病院からの帰り道にバイク事故を起こし、頭を打って脳に障害を負った。独り言をひたすら言い続けるだけで物事は理解できなくなったという。

母のいない孫と脳の障害で言動がコントロールできなくなった次男の世話をする生活は、エリザベスさんにとってあまりにタフ。「本当に本当に大変だった」と両手を振りかざすエリザベスさん。その後、孫と3女のオディルさん(22)と一緒に家を出て、自分の故郷のニベ村に戻り、再スタートしようと決心した。

自力で建てた小さな家

エリザベスさんたちはニベ村で自力で家を建てた。赤土の壁でできた4畳半ほどの広さの小屋だ。自分で地面を掘って積み上げた土壁に、エリザベスさんが働いて貯めた6万2000CFAフラン(およそ1万2400円)でトタン屋根と木のドアをつけた。

部屋の半分を占めるのは、収穫したキャッサバ、スープにするアブラヤシの実、鍋などの調理道具。服はほとんど予備をもたず、洗濯するための石けんもない。夜はヤシの葉で編んだ薄いマットを床に敷き、蚊帳を吊って家族3人で眠る。

ようやく手に入れた我が家だが、雨季になると、屋根と土壁の間の大きな隙間から雨が入って、小屋の中が水浸しになるときもあるという。

エリザベスさんが建てた小屋。ふつうは台所に使う小屋(換気するのに屋根との隙間が空いている)だという

3人が暮らす小屋の外観。ベナンではふつう台所に使う小屋(換気するのに屋根との隙間が空いている)だという

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