【西サハラの声③】車で人をひくのはモロッコ警察の常套手段、国連は見て見ぬ振り

サハラーウィの人権活動家モハメド・ブータバーさん。「モロッコ警察のサハラーウィに対する迫害は度を超えている」と怒りをぶちまける

1975年に隣国のモロッコに侵略されて以降、弾圧に苦しむ西サハラの砂漠の民サハラーウィ。人権活動家のモハメド・ブータバーさんは2006年、西サハラ最大の都市ラユーンで警察の車両にひかれ、腎臓を損傷した。「モロッコ警察はサハラーウィに対して情け容赦ない。国連も当てにならない」と嘆く。(連載「西サハラの声」第1回はこちら

意識を失った相手をリンチ

ブータバーさんはラユーン生まれの53歳。5歳の時に、西サハラはモロッコに侵略された。西サハラの独立を目指して長年、非暴力の抗議活動を続けてきた。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の調査団は2006年、西サハラの現状を把握するためラユーンを訪れた。サハラーウィは自分たちが迫害されていることを示そうと、ここぞとばかりに大きなデモを街中で実施した。

それをよく思わなかったモロッコ警察は、車両でデモの人だかりに突進。はねられたのがブータバーさんだった。頭を殴打、意識を失った。

その後も警察からリンチを受けたブータバーさん。仲間の助けで一命をとりとめたものの、頭を12針縫う重傷を負った。

この時に腎臓も損傷した。ブータバーさんはそれ以来、毎週3回の人工透析を受けなければならなくなった。だが最近はモロッコ人の医師から、人工透析を拒否されるようになったという。ブータバーさんは、人工透析の継続を求めてラユーンの裁判所に嘆願書を提出したところだ。

「人工透析の拒否は患者に死ねと言っているようなもの。モロッコ人の医師はサハラーウィに対して情けもない」

ヘリコプターから突き落とす

「車でデモ隊に突進するのはやつら(モロッコ警察)の常套手段」

ブータバーさんがこう話す通り、これまで多くのサハラーウィが警察の車にひかれ、殺されてきた。これは「モロッコ政府に楯突いた」という理由だけにとどまらない。

たとえば2019年。この時、サッカーのアルジェリア代表がアフリカネイションズカップでモロッコ代表に勝利した。反モロッコで親アルジェリアのサハラーウィはその夜、ラユーンの街中に出て大喜びした。

そんな時、2台の警察車両がサハラーウィの人混みに突進。サハラーウィ女性のサバ・ンジューニさんが命を落とした。アムネスティ・インターナショナルの報告によると、1台目がンジューニさんははね、2台目がンジューニさんを上からひいていったという。

警察の蛮行はそれだけにとどまらない。ブータバーさんはこう続ける。

「モロッコ警察は、飛行中のヘリコプターからサハラーウィを突き落として殺したりもする。やつらのサハラーウィに対する迫害は度を超えている」

モハメド・ブータバーさんは2006年に警察車両にひかれて以来、人工透析が必要となった。人工透析を長年受けてきたため、腕は膨れ上がっている

モハメド・ブータバーさんは2006年に警察車両にひかれて以来、人工透析が必要となった。人工透析を長年受けてきたため、腕は膨れ上がっている

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