【西サハラの声③】車で人をひくのはモロッコ警察の常套手段、国連は見て見ぬ振り

サハラーウィの人権活動家モハメド・ブータバーさん。「モロッコ警察のサハラーウィに対する迫害は度を超えている」と怒りをぶちまける

「国連はUnited Nothingだ」

サハラーウィへの人権侵害が続く西サハラだが、実は「国連西サハラ住民投票監視団」(MINURSO)という国連ミッションがラユーンに常駐している。サハラーウィの政治組織ポリサリオ戦線とモロッコ政府は1991年、国連の仲介のもと、西サハラの独立の是非を問う国民投票の実施を約束した。この責任を負うのがMINURSOだ。

だが32年経った今も国民投票は実現していない。モロッコ政府が国民投票実施のためのガイドラインにたびたび文句をつけ、妨害してきたからだ。フランスや米国といった国連安全保障理事国もモロッコを後ろ支えしてきた。

ブータバーさんはMINURSOについてこう吐き捨てる。

「国連は役立たず。あいつらは西サハラに来て、お茶を飲んでいるだけ。United Nation(UN=国連)じゃなくてUnited Nothingだ」

ブータバーさんがこう憤るのは国民投票が実施されないだけでなく、サハラーウィが迫害されていることを国連が見て見ぬふりをしているからだ。

ブータバーさんが警察車両にひかれ、入院した2006年のケースも調査されることはなかった。ラユーンにいたOHCHRのスタッフは当時、ブータバーさんと接見しようと病院までやって来た。だがモロッコ政府に邪魔され、引き返した。

MINURSOは世界で唯一の、人権保護の任務を負っていない国連ミッションだ。それをいいことにモロッコ政府は、指示に従わないサハラーウィに対して弾圧を繰り返してきた。

安全保障理事会でMINURSOに人権保護の任務を入れる提案が何度もあった。だがその度に常任理事国のフランスが拒否権を行使。採択されることはなかった。

「安保理は結局、モロッコの言いなり。サハラーウィの中で国連に期待している人はほとんどいない」とブータバーさんは嘆く。(続く

西サハラは、植民地の状態がいまだに続く非自治地域。1991年には、西サハラの独立の是非を問う国民投票の実施をミッションとする「国連西サハラ住民投票監視団」(MINURSO)が結成された。だが西サハラを実効支配するモロッコ政府の干渉で、国民投票は行われていない。西サハラの最大都市ラユーンに置くMINURSOの本部には、国連の旗の横にモロッコの国旗がはためく

西サハラは、植民地の状態がいまだに続く非自治地域。1991年には、西サハラの独立の是非を問う国民投票の実施をミッションとする「国連西サハラ住民投票監視団」(MINURSO)が結成された。だが西サハラを実効支配するモロッコ政府の干渉で、国民投票は行われていない。西サハラの最大都市ラユーンに置くMINURSOの本部には、国連の旗の横にモロッコの国旗がはためく

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