左半身に身体障がいを抱える人権活動家のサイード・ハダッドさん。これまで幾度もモロッコ警察に拘束され、暴行を受けてきた
障がい者施設も閉鎖
ハダッドさんは暴行以外にもさまざまな嫌がらせを受けてきた。ラユーンにはかつて、障がい者のためのコミュニティーセンターがあった。ハダッドさんもそこをよく訪れ、仲間たちと運動をしたり、本を読むなどしていた。だがハダッドさんが通うと聞きつけたモロッコ警察はコミュニティーセンターに押し入り、施設を破壊。閉鎖へと追い込んだ。
ハダッドさんはまた、働くことも妨害される。ハダッドさんはかつて、ラユーンから10キロメートルほど離れたフォーメルエッドと呼ばれるビーチで、テントやバーベキューセットを観光客に貸す仕事を始めようとした。
ところがモロッコ警察が来てハダッドさんを拘束。レンタルセットも没収した。すべてを失ったハダッドさんは仕事を諦めざるをえなかった。
「警察はかつてイード(犠牲祭と呼ばれるイスラム教徒の祝日)に意味もなく私を拘束し、暴行した。逮捕でも調査でもなく、ただの嫌がらせ。肉体的、精神的に私を追い込みたいのだろう」
だがハダッドさんは、西サハラの独立を目指す活動をやめない。繰り返し暴行されても、抗議デモやサハラーウィの祝日、仲間が釈放された時の祝いの席などには必ず参加する。それは西サハラはサハラーウィの国であり、自分たちには民族自決権があるという強い思いからだ。
敬虔なイスラム教徒であるハダッドさんはこう言って笑う。
「モロッコ警察なんて怖くない。怖いのはアラーだけさ。自分にうそをついて、アラーの教えに反することはできない」(続く)
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