7月の大統領選を控えて反体制派への弾圧強まるベネズエラ、アムネスティ「国際社会は知るべき」

国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは4月16日、南米ベネズエラで反体制派への弾圧が年明けからますます強まっている、と事態を憂慮する声明を発表した。7月28日に実施される大統領選を前に、マドゥロ政権は有力な野党候補を排除したり、政府を批判する人権活動家を不当に拘束したりするなど横暴が目立っている。

立法、行政、司法の三権をすべて掌握するマドゥロ政権が弾圧のターゲットとするのは、ロシオ・サンミゲル氏やハビエル・タラソナ氏をはじめとする人権活動家、反政府活動家として国民の間に高い人気を誇るマリア・コリーナ・マチャド元国会議員が党首を務める野党「ベンテ・ベネズエラ」の関係者、反政府活動家らだ。

アムネスティによると、こうした人たちへの恣意的な拘束、刑法の悪用、不当な裁判、汚名キャンペーン、拷問、強制失踪が急増しているという。これに加えて、NGOや反体制派の関係者に懲役刑などの厳罰を与えることを可能にする法制化もマドゥロ政権は推し進めている。

ベネズエラの最高裁判所は1月、2023年10月に実施された野党の予備選で圧勝したマチャド氏の大統領選への立候補を禁じる判決を言い渡した。マチャド氏に代わって野党統一候補となった大学教授のコリーナ・ジョリス氏についてもマドゥロ政権は候補者登録も認めなかった。

アムネスティは「ベネズエラではかねて、マドゥロ政権を脅かす反体制派への脅迫・弾圧が起きている。国際社会はこの事実を知り、糾弾し、権利のために立ち上がる活動家たちを支援しなければならない。マドゥロ政権の弾圧政策をきっぱり終わらせる必要がある」と主張する。

アムネスティは、ハビエル・タラソナ、ロシオ・サンミゲル両氏など政治的理由で拘束されたすべての人を無条件で即時釈放すること、反体制派を迫害する法案を撤回すること、ベネズエラの状況を国際社会が監視できるようにすること――などを求める。

マドゥロ政権による一連の行為は、「人道に対する罪」として、国際刑事裁判所(ICC)が調査すべき事項に含まれる可能性があるという。

経済が崩壊し、世界最悪のインフレがおよそ10年にわたって続くベネズエラではすでに、国民の4分の1近く(2023年11月30日時点で約772万人)が難民として国を去った。国際通貨基金(IMF)は、ベネズエラ難民の数は2025年までに840万人に達すると予測している。