コロンビア・スラム住民の人気の仕事は何?「露店」「廃品回収」「麻薬売買」ではなかった

コロンビア・スラム住民の人気の仕事は何?「露店」「廃品回収」「麻薬売買」ではなかったメデジンの中心部とスラムを結ぶロープウェー。スラムの住民にとって通勤には欠かせない交通機関だ

露店の売り上げは数千円?

コールセンター以外の仕事をみると、スラムの中で小さな商売を営む住民も少なくない。サルチパパ(ソーセージとフライドポテト)やエンパナーダ(大きな揚げ餃子みたいなもの)を路上で売るのがポピュラーだ。プエルタさんによると、こうした露店の1日の売り上げは6万~200万ペソ(2300~7万7000円)とピンキリだという。

廃棄物から値がつく物を回収してリサイクル業者に売る住民もいる。プエルタさんによれば買い取り額の相場は、壊れた冷蔵庫約3万4000ペソ(約1330円)、金属スクラップ1キログラム当たり335ペソ(約13円)、紙も1キログラム773ペソ(約30円)。

金目の物を見つけられるかどうか自分次第。とはいえ「大金は稼げない。年金を受給できない高齢者同士が協力して、真っ先に高値の物を回収して売っている」とプエルタさんは説明する。

マリファナ売買はSNSで

マリファナやコカインといった麻薬の売買に手を出す住民も一部だがいる。簡単に稼げるからだ。プエルタさんは「マリファナを吸って意識や心の安定を求める人も増えている」と話す。マリファナはプランターで育つので、栽培しようと思えば誰でもできる。フェイスブックやテレグラムなどのSNSを使って取引し、現物は実際に会って渡すという。「1日で500万ペソ(約20万円)を稼げることもある」(プエルタさん)

ただし、簡単に稼げる麻薬の販売は、コロンビアでは違法。警察に販売行為が見つかると、刑罰は懲役6~12年だ。もっと恐ろしいのは、麻薬の売買がマフィアに見つかることだ。マフィアは組織の稼ぎが減ることを危惧し、個人で活動する売人を殺す。

週末はパーティーざんまい

さまざまな手段で稼いだお金はどうなるのか。スラムでは生活費だけでなく、マリファナを吸ったり、酒を飲んだり、パーティーを開いたりして消えていくという。プエルタさんは「スラムの若者にとっての幸せはこういった暮らし。だからみんな、スラムから出たいとは思っていない。仕事をするのは週末のパーティーを楽しむため」と話す。

ただプエルタさんは先日、スラムを出て、メデジンの中心部にあるアンティオキア大学のそばに引っ越した。生活水準を上げ、大学までの通学時間を削減するためだ。

「獣医の仕事を見つけるのは難しい現実がわかった。だからフランス語や英語の教師を目指すことに変えようかなと考え中」とプエルタさん。彼はいま、将来の夢と現実の間で葛藤している。

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