バンコクの大学院で音楽教育を学ぶミャンマー人ピアニスト、故郷でピアノ教室を開きたい!

おしとやかに微笑むレイチェル・スーさん。「新しいことに挑戦するのが好き」と語るおしとやかに微笑むレイチェル・スーさん。「新しいことに挑戦するのが好き」と語る

タイ・バンコクのシラパコーン大学大学院でこの6月から音楽教育を専攻するミャンマー・ヤンゴン出身のレイチェル・スーさん(24歳)。子どもに音楽を教えることにやりがいを感じ、タイの大学院で音楽教室を経営するスキルを学びたいと語る。スーさんはヤンゴンで高校を卒業した後、大学に通いながらピアノを教えていた。

カメラ2台を使ったレッスン

スーさんはヤンゴンのインセイン地区で、音楽一家のもとで生まれた。母親の勧めで8歳の時にピアノを始めたという。父はピアノの調律師。家にはたくさんピアノがあった。母は看護師だが音楽を聞くのが好きだった。スーさん本人は当時、ピアノレッスンを嫌々受けさせられていたという。「途中で投げ出したいと思ったこともあった。楽しく演奏できるようになったのは16歳ぐらいから」と笑う。

彼女が通ったのはキリスト教系のホープ・プライベート・ハイスクール。この高校を卒業した2017年に音楽団体「ジンダラエ 合唱団&オーケストラ」 に入った。合唱やピアノを演奏している動画をユーチューブ(青い衣装を着た女性がスーさん)やフェイスブックで配信したところ、コロナ禍のロックダウン中に活動が注目され始めたという。再生回数は次第に伸び、最高で58万回。「カルテット(4人組)で歌った、カレン族の伝統的なニューイヤーソングの再生数が一番伸びた。他にも小学生が合唱する動画もある」

スーさんはコロナ禍のさなか、小学生を対象にしたピアノのオンラインレッスンを始めた。「(ピアノのオンラインレッスンは)ミャンマーでは初めて。私の顔を写す用と手元を写す用の2台のカメラを設置して、ピアノを弾くときの手の動きを生徒に見せるようにした」(スーさん)

レッスンは1週間で50コマ。ピアノのレッスンだけでなく、自分で作ったオリジナルのピアノ教本や、家にあったピアノやキーボードも売った。初めの3カ月で30万チャット(2020年の平均レートで計算すると約22万5000円)稼いだという。

ただ軍政下のミャンマーでは停電が深刻だ。電気が使えるのはヤンゴンでも1日わずか4〜5時間。スーさんはオンラインレッスンを辞め、対面でのピアノの家庭教師を再開した。毎月70万チャット(2023年の平均レートで計算すると4万5000円)稼いだという。

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