14歳で学校を辞めたミャンマー人の少年、バンコクで「1年後の生活はわからない」

ミャンマー・ヤンゴンからやってきたシンタンアンさん

「高校生活も大学生活も経験できないのはとても悲しい」。こう話すのは、バンコクにあるタイ語学校に通い始めたミャンマー・ヤンゴン出身のシンタンアンさん(18)。2020年から始まったコロナ禍でミャンマーでは学校が閉鎖された。2021年の軍事クーデターと国軍が導入を発表した徴兵制から逃れるために、2カ月前にタイへやってきた。4年以上まともに学校に通っていない。

授業に国軍のスパイがいた

取材の冒頭、自己紹介も覚束ないほど緊張した表情のシンタンアンさん。異国での初めての一人暮らしで人との交流がほとんどなく、少し怯えているようだ。

2021年に軍事クーデターが起きてから通ったのは、ミャンマーの民主派が軍政に対抗して作った国民統一政府(NUG)傘下の教育省が開講するオンラインのコースだ。教えるのは、職務をボイコットして抗議する民主派の教師。同じく学校に通うことをボイコットした学生や、コロナ禍で学校に行けなかった学生が授業を受ける。

シンタンアンさんが登録したのは8カ月のコースだった。だが5カ月で終了してしまった。教師が国軍に拘束されたからだ。親が軍人である1人の子どもが生徒を装い、授業の内容や教師の居場所などを国軍に伝えるスパイ活動をしていたという。そのスパイは「クラス全体のチャットグループから4、5人を選んで少人数のチャットグループを作成し、情報を取っていった。自分はターゲットにされなくてラッキーだった」と複雑な表情を浮かべる。

この出来事をきっかけに疑り深くなった。「ミャンマー人を簡単に信じられなくなった。ミャンマー人と知り合ったら、信用できる人物かどうか注意する」と警戒心を見せる。

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