タイ、ミャンマー、ラオスの国境が交わる地域「ゴールデントライアングル」(黄金の三角地帯)。ケシの栽培地として名を馳せたこの地は今、中国のカジノ企業が開発を進める経済特区に変貌した。だが実情は人身売買や麻薬取引、ロマンス詐欺などが横行する犯罪都市だ。「無法地帯」とも称されるこのゴールデントライアングルにganas記者が潜入した。
メコン川の先にあるカジノ街
「ブォン、ボッボッボッボッ」
木造の船が大きなエンジン音を鳴らしながら船着場を出発した。細長い船は茶色ににごったメコン川を切り裂き、北上していく。
私はラオス北西部の小さな町パックベーンを出発し、上流にある町フエイサイに向かっていた。
雨季が終わる10月のラオス。清々しい風が船内を吹き抜ける。窓の外に目をやると、緑が生い茂った山々がメコン川の両岸に広がり、川辺では野生のゾウが水浴びをしていた。私はガラガラの船内の2人席に横たわると、ゆっくりと流れる時間を堪能した。
だがどこか落ち着かない。心の奥で小さくない不安を感じていた。なぜならこれから行くのがあの悪名高き場所、ゴールデントライアングルだったからだ。
ゴールデントライアングルといえば、アヘンやヘロインの原料となるケシの栽培で有名なところ。1990年代に生産量を減らし、アフガニスタンにアヘンの生産量でトップを譲った。だが2021年のタリバンの復権とミャンマーのクーデターの影響で、2023年には再び世界1位となっている。
ケシの栽培以上に今有名なのが、総合エンターテイメントリゾート「コールデントライアングル経済特区」だ。中国のカジノ企業キングスローマンズグループがラオス政府とは2007年に交わした契約書によると、同社はラオス北部のボケオ県トンプン郡にある約3000ヘクタールの土地を99年にわたって独占的に開発できるというもの。これ以降、カジノを中心にホテルやコンドミニアム、レストランなど観光施設の建設を進めてきた。