【ラオス無法地帯を行く①】ケシ栽培で栄えた黄金の三角地帯、今は中国マフィアが支配する犯罪都市

メコン川を挟んでタイ側から見たゴールデントライアングル経済特区。真ん中に見えるのはキングスローマンズグループが所有するカポックスターホテル

保護されたのは15年で1700人

キングスローマンズグループは謎に包まれた企業だ。表の顔はカジノの運営会社。だが欧米の研究機関やメディアは、さまざまな犯罪に手を染めるマフィアグループだと非難する。

2022年の1月と2月には、それぞれ6人と8人の女性がゴールデントライアングル経済特区で保護された。女性たちはオンライン上で人を騙す「チャットガール」として働かされていた。だがノルマを達成できなかったため、売春宿に送られたり、カジノの掃除をさせられたりしていたという。

ラオス政府の発表によると、2007~22年にゴールデントライアングル経済特区で保護されたのは約1700人。実際はその何倍もの人が人身売買の被害に遭っていると予測される。これ以外にも売春や麻薬の密輸、絶滅危惧種の野生生物の違法取引など悪い噂を上げればきりがない。

ここまで怪しい経済特区は聞いたことがない。これは現地に行って、自分の目で確かめるしかない。そう思った私は、古都ルアンパバンからボートに乗ってフエイサイに行き、そこから陸路でゴールデントライアングル経済特区に入ろうと画策していたのだ。

ふとメコン川に目を向けると、ペットボトルを浮きにして村人が網漁をしている。その隣では川に飛び込んで遊ぶ子どもたち。

絵に描いたようなのどかな景色が広がるメコン川。この上流に犯罪の巣窟と呼ばれるカジノ街がある。私は少しずつ大きくなる不安をかき消そうと、昼食用に準備していたラオス名物のフランスパンのサンドイッチ、カオチーパテを頬張った。(続く

ゴールデントライアングルはかつて、ケシの栽培で名を馳せた。タイとラオスでは現在、ケシはほとんど栽培されておらず、大部分がミャンマー産だ(写真はタイのアヘン博物館)

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