【ラオス無法地帯を行く②】世界を股にかけるオンライン詐欺集団、雇われるのは貧しいラオス人

ゴールデントライアングル経済特区のコンドミニアム。1階がレストランとスーパー。2階以上が宿泊施設だ

犯罪の温床と呼ばれるラオス北部のゴールデントライアングル経済特区。その実態を探るため、ganas記者の私は経済特区にほど近い小さな町フエイサイを訪れた。そこで出会ったのは、かつて中国のオンライン詐欺会社で働いていたラオス人の青年ラオだった。ゴールデントライアングルに潜入取材したルポ「ラオス無法地帯を行く」の第2回。(第1回はこちら

オンライン詐欺師ラオ

朝6時、寺から聞こえる放送音で目が覚める。托鉢の時間だ。オレンジ色の袈裟を着た仏僧たちが列になってフエイサイの町中を練り歩く。人々は道沿いに座り、頭を下げては食べ物などを鉢に入れていく。

ラオスもタイやミャンマーと同じ上座部仏教の国だ。来世が少しでも良くなるようにお布施などで徳を積む。その厳かな祈りを横目に、私はゲストハウスのインスタントコーヒーをすすった。

朝の8時にラオと会う約束をしていた。実はゲストハウスのオーナーに前日、ゴールデントライアングル経済特区を取材したいと打ち明けた。するとオーナーは「あそこで取材なんてしたらすぐに捕まって牢屋行きだ。フエイサイで取材した方がいい。数人ならゴールデントライアングルで働いていた人間を知っている」と言って、ラオを紹介してくれたのだ。

ラオはフエイサイのツアーガイド。かつてはゴールデントライアングル経済特区で「スキャマー」として働いていた。スキャマーとは、ネット上で人を騙してお金を盗み取る詐欺師のことだ。

短髪で浅黒い、いかにも好青年のラオス人といった風貌のラオ。そんな彼がオンライン詐欺師だったとは想像しがたい。

ラオは犯罪に手を染めるようになった経緯とその手口を教えてくれた。

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