【ラオス無法地帯を行く②】世界を股にかけるオンライン詐欺集団、雇われるのは貧しいラオス人

ゴールデントライアングル経済特区のコンドミニアム。1階がレストランとスーパー。2階以上が宿泊施設だ

きっかけはコロナ禍

ラオがツアーガイドとして働き始めたのは2014年。英語を流ちょうに話すラオは、外国人観光客からも頼りにされるガイドだった。だが2020年3月ごろに始まったコロナ禍で旅行者が途絶え、ラオの収入は激減した。

そんな中、友人から誘われたのがゴールデントライアングル経済特区での仕事だった。仕事内容は詳しく知らなかったが、月5000元(約10万円)の収入はツアーガイドよりも良い。

家には妻と生まれたばかりの赤ん坊がいる。「家族を路頭に迷わせるわけにはいかない」とラオはゴールデントライアングルに向かった。

勤務場所はゴールデントライアングル経済特区の中心地に建つビル。1階は中華料理屋で、2階がオフィス。3階から上は従業員が泊まる部屋になっていた。

そこで与えられたのがスキャマーの仕事だった。手口はこうだ。ラオはマッチングアプリ「ティンダー」でかわいい女の子になりすまし、男性と知り合う。

「当時はインドネシア人をターゲットにしていた。だからムスリム(イスラム教徒)ウケするような写真をインスタグラムからとってきて、自分のプロフィールにしていたよ」

ラオはこういってはにかむ。

知り合った男性と仲良くなると、ワッツアップやラインなどのメッセージアプリに乗り換え、「愛してる」「さみしい」といった言葉を交えて関係を深めていく。

その後、「あるアプリ」をダウンロードしてもらう。それは中国企業が作った投資アプリ。アップルストアやグーグルプレイには存在せず、URLからしかダウンロードできないものだ。

「相手の男性がアプリをダウンロードした後、自分(ラオ)のアカウントを教えて『1日10分、出てくるボタンを押してくれるだけでいいから』と言って、自分の代わりに運用してもらう。男性は言われた通りボタンを押すだけ。するとアカウントのお金がどんどん増えていく。それを毎日目の当たりにすると、いやでも興味をもつ。そんな時に『あなたもアプリしてみる?』と持ちかけるんだ」(ラオ)

男性は自分のアカウントを作り、お金を振り込んで運用を始める。すると同じようにお金が貯まっていく。気を良くした男性はもっと投資しようとお金をどんどん注ぎ込む。

だがそんな幸せな時間は長くは続かない。アプリがある時、急に使えなくなるのだ。気が動転した男性はラオに連絡を取ろうとするが、それも時すでに遅し。ラオは相手をブロックし、スキャマーとしての任務を終える。

「アプリは3カ月ごとにリニューアルされる。スキャマーたちはその間、相手を見つけ騙し続けるんだ」(ラオ)

托鉢をする僧侶ら。仏教徒は日用品や食べ物を僧侶に施与し、徳を積む

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