【ラオス無法地帯を行く③】中国化する小さな町、農民はカジノ開発で土地を奪われるも「面と向かって批判できない」

トンプンの目抜き通り。レストラン、カラオケ(キャバクラ)、マッサージ屋が軒を連ねる

マッサージ屋は喫煙可

一般のラオス人から話を聞けないものか。こう思った私はマッサージ屋に入った。ここならマッサージ師と1時間、怪しまれず小話ができる。値段は1時間250バーツ(約1000円)。バンコクよりは安いが、地方都市よりは値が張る。“中国人価格”だろうか。

マッサージをしてくれたのは30歳のネー。彼女はトンプンから遠く離れたラオス南部の街パクセーからトンプンにやってきた。ネーによると今、ラオス全土からトンプンやゴールデントライアングル経済特区に人が押し寄せているという。

理由は仕事だ。マッサージ師としてパクセーで働いても客が来ない。だがトンプンなら中国人客が毎日来て、単価も高い。この日の客は6人、日本人の私以外は全員が中国人だったという。

確かにカーテンを挟んで隣のベッドでは、客が中国語でうるさく電話している。その奥には爆音で動画を見ている客も。

部屋の隅に目を向けると、タバコの吸い殻が落ちている。ここでタバコが吸えるのか。私は驚いてネーに聞くと、「吸えるよ。中国人はタバコが好きだからね」。

ラオスでも隣のタイでも多くのマッサージ屋に入ったが、喫煙できるマッサージ屋は後にも先にもここだけ。トンプンではレストランもゲストハウスも、マッサージ屋でさえも、すべて中国式だった。

マッサージ屋から出ると、カラオケ屋のネオンがいつも以上に眩しく瞼に入ってきた。中ではラオス人らしき女の子たちが携帯電話を触っている。その中に中国人男性御一行が入っていく。

側から見るとトンプンの街は賑わっているように見える。だが実際は農業を奪われ、中国人を相手にビジネスをするしか選択肢がなかった。この押しつけられた賑わいを目の当たりにし、少しいたたまれなくなった。(続く

トンプンのレストランでは中国のビールも常備

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