コロンビア人が手裏剣!?「忍術の教えで悲しみを乗り越えた」

日本古武術の師範であるホルヘ・ロペスさん。メデジンのショッピングモール「ビスカジャ」で撮影。アジア文化紹介イベント「サンライズ」に登壇する直前のようす。会場では拍手と歓声が響いた

コロンビア第2の都市メデジンで日本古武術の師範として技を磨くホルヘ・ロペスさん(34)。コロンビアにいながら、千葉県発祥の武神館武道という流派に学んで15年以上が経つ。「家族との問題があって、うつ病になり、何も食べたくない日もあるくらい辛かった。日本古武術の教えが悲しみを乗り越える助けになったんだ」と語る。

家族から見放される

古武術をやるなら、身体的な修練だけでなく、その教えから「精神的な教養」を身につけることが大切だとロペスさんは力説する。こう考えるのは、ロペスさん自身にも古武術の教えに救われた経験があるからだ。

スポーツの学位を取得するために通っていたメデジンの大学の卒業を間近に控えた26歳のころ、ロペスさんは学業のかたわら、大学の事務と実験室の助手の仕事を抱え、また武術指導も始めていた。朝6時から夜10時まで動き回る日々。

コロンビア政府からの奨学金で学費の大部分をまかなっていたので、良い成績をとる必要があり、学業でも妥協はできなかった。「疲れてよく居眠りするから、みんなからはオールド(年寄り)先輩と呼ばれてからかわれた」と笑う。多忙から卒業できるか不安になることもよくあった。

やっとの思いで卒業したロペスさんに対して家族が求めたのは、お金だった。高齢者向けのパーソナルトレーナーとして働き始めて間もなかったので金銭的な余裕はなかった。

だが母やきょうだいはロペスさんに対して、家族の中で最も重い経済的負担を強いた。不公平だと拒否しても侮辱的な言葉を吐かれ、自分のこれまでの努力を見ていたはずの「家族から見放された」と感じたという。自分の力で前に進むことを誓い、ひとり暮らしを始めたが、孤独感からうつ病になった。

ロペスさんと弟子たちと武術に励む武道場(コロンビア・メデジン)。神棚をはじめ日本文化を思わせる装飾がある

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