コロンビア人が手裏剣!?「忍術の教えで悲しみを乗り越えた」

日本古武術の師範であるホルヘ・ロペスさん。メデジンのショッピングモール「ビスカジャ」で撮影。アジア文化紹介イベント「サンライズ」に登壇する直前のようす。会場では拍手と歓声が響いた

「万変不驚」の精神で

孤独を感じた時によく思い出したのは古武術の教えだった。特に支えになった言葉についてロペスさんは「万変不驚。人生では何が起きるかわからないから、悲しみも恨みも受け入れる揺るぎない心をもつこと。この言葉が意味することを何度も考えた。この時期は私にとっての武者修行だった」と振り返る。

それ以来、武者修行のころからそばにいてくれた愛猫が死んだときなど、喪失感と悲しみを乗り越えるために同じ教えを思い出した。忍者の教えである「花情竹性」(優しさと華やかさをもつ花、まっすぐでしなやかな竹のように生きること)や、武神館の教えである「人の道は、正義也と知れ」など、大切にしている教えも増えた。

武者修行から8年が経ち、現在は週5日、メデジンの道場で古武術を教えている。鍛冶屋に特注して作ったという手裏剣や大刀など珍しい武器を扱うクラスも人気だ。アニメやゲームの影響で気軽に参加する人も多いが、ロペスさんは最終的には古武術の本質を「心伝」し、弟子の人生の助けになりたいという。

これまでに指導した弟子は200人以上。その中に、彼に憧れて髪を長く伸ばし、父のように慕う青年もいる。今では家族との関係も少しずつ良くなり、武術の教えが自分の「精神的教養」につながっているのを感じる。

「2年後には日本に行き、武神館本部道場を訪ねるつもり。日本語も勉強している。日本古武術の神髄を知り、コロンビアにもち帰って広めたい」と語るロペスさんの修練は続く。

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