コロンビアの国内避難民アドルフォ・インカピエさん。ベジョで自ら経営する郷土料理レストラン「ラ・ムラ・パイサ」で撮影
故郷に別荘を購入
逃げた先は現在暮らすベジョ。まずはトラック運転手として働き始めた。幼い子どもがすでに2人いたので家族のために必死だった。ある程度貯蓄できた2013年、ベジョで今のレストランをオープンさせる。経営は順調で1カ月の売り上げは3500万ペソ(約120万円)。平日の昼時は満席だ。
故郷を離れて22年。2人の子どもも成長してひとりは社会人、もうひとりは大学生になった。経済的に困ることもない。
ただそれでも生まれ故郷のサンラファエルを忘れることは一度もなかった、とインカピエさん。近年はパラミリタレスの活動も沈静化したため、小さな別荘を購入して2週間に一度のペースで里帰りする。
「ベジョでは商売をするのにマフィアにみかじめ料を毎月4万ペソ(約1400円)払わないといけない。いろいろと気を配る必要があって落ち着かない。サンラファエルは本当にいい」とインカピエさんは語る。
ただ表面上は活動が沈静化したとはいえ、パラミリタレスが完全に撤退したわけではない。いつどこで何が起こるか誰にもわからない。
「大切なのはお金ではない。美しい山や川に囲まれた自然がいっぱいの生まれ故郷で家族や犬、猫、牛たちとともに穏やかに暮らしたい。孫たちの成長も見たい。できることなら明日にでも帰りたいよ。同郷の嫁さんも賛成してくれている」。気さくなインカピエさんだが、そう語る表情はどこか複雑だった。
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