コロンビア・スラムの少女「ママ、私、殺されちゃった」、元警官が伝えたい市街戦で起きた悲劇の数々

ジョニ・レンドンさん(コムナ13のYMCAで撮影)。レンドンさんは本の執筆だけでなく、武装集団の元メンバーを対象とする社会復帰プログラムや非暴力主義を広めるワークショップにも熱心に協力する

コロンビア・メデジンの13区(コムナ13)に住む作家、ジョニ・レンドンさん(42)。20年にわたって警官だった彼が作家に転身したのは、コムナ13の住民たちと触れ合うなかで、彼らが経験した武力紛争下の悲劇が知られないままになっていると気付いたからだ。政府軍とゲリラのあいだで起きたコロンビア史上最大の市街戦。その舞台となった、かつての国内最恐のスラム・コムナ13の記憶を、彼の著作のなかに見ることができる。

小さな身体が吹き飛んだ

コムナ13を題材に本を書こうと思った理由についてレンドンさんは「住民を取材して最も印象的だったのは、11歳の少女アレクサンドラさんの悲劇だ」と回顧する。

2002年6月17日午前7時ごろ、彼女は学校に「ゲリラ同士の銃撃戦が発生したため登校できない」と伝えるため、弟とともに公衆電話へ向かった。彼女の横にゲリラの爆弾が落ちたのはそのときだった。殺傷能力を高めるため爆弾の中に詰められていたボルトやナットが、爆ぜた勢いのまま彼女を襲う。小さな身体が吹き飛んだ。

4メートル後ろにいた弟は無事だった。彼が母親を呼びに行っている間も、彼女は道に倒れ、体中から血を流していた。駆け付けた母親に向かって「ママ、ママ、私、殺されちゃった」と泣きながら、彼女は死んだ。

アレクサンドラさんは、生活のために路上でバラの花を売る仕事をしながら、学校にも欠かさず通う優等生だった。同じコムナ13に住む病気の子どもたちを見るたびに心を痛め、彼らを苦しみから癒すために医者になりたかったからだ。彼女の夢は、あまりに短く潰えてしまった。

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