コロンビア・スラムの少女「ママ、私、殺されちゃった」、元警官が伝えたい市街戦で起きた悲劇の数々

ジョニ・レンドンさん(コムナ13のYMCAで撮影)。レンドンさんは本の執筆だけでなく、武装集団の元メンバーを対象とする社会復帰プログラムや非暴力主義を広めるワークショップにも熱心に協力する

暴力の時代を記録する

コムナ13のソーシャルワーク担当の警官としてレンドンさんが配属されたのは2003~05年。この2年間で、アレクサンドラさんに起きたような悲劇を住民からたびたび聞いた。

2001年から2003年初めまで、コムナ13は「暴力の時代」だった。居住区で頻発する政府軍・右派ゲリラ・左派ゲリラの武力衝突は、2002年5月のマリスカル作戦と、ウリベ政権誕生直後である同年10月のオリオン作戦でピークを迎えた。多くの住民が政府軍とゲリラの両方から標的にされ、命を奪われた。レンドンさんがコムナ13にやって来たのはこの直後だった。

暴力の時代にコムナ13では何が起きたのか。知りたくなったレンドンさんは、コムナ13の悲劇を記録したドキュメンタリーや本はないのかと住民に尋ねた。返ってきた答えは「そんなものない」。

そこでレンドンさんは警官として働くかたわら、自らコムナ13の住民にインタビューして、暴力の時代に彼らが現実として経験した悲劇的な物語をまとめ始めた。これらは2007年に出版された処女作『メデジンのコムナ13』(未邦訳)にまとまった。大きな反響があり、最終的には5万部以上を売り上げ、英語・フランス語・ドイツ語にも翻訳された。

「子どものころから文章を書くことが好きなわけではなかった」というレンドンさんだが、処女作の執筆過程と手応えから、38歳になった2020年、20年の勤続を終えて警官を退職。作家として生きることを選んだ。

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