ゲリラに家を燃やされたコロンビアのシングルマザー、コスメを売り歩き4児を養う

コロンビア国内避難民のホアナ・モントジャさん。コスメをリュックにつめて売り歩く

持ち出したのはオムツだけ

遡ること14年。避難民となる前にモントジャさんが住んでいたのは、メデジンを山のように囲む斜面上の住宅密集地帯のニキア・カマコル。武装したAUCの兵士が住民に対する略奪を繰り返しており、拒否すれば殺された。モントジャさんの元夫もAUCの兵士に命を狙われ、身の安全のため自宅から離れていた。そうした中、10人ほどのAUC兵士がガソリンの樽を持って、ひとりでいるモントジャさんの家を包囲した。

彼らは窓を割り、人糞を投げ、モントジャさんを脅し、壁や地面などに「AUC」の文字を入れることで領土の所有を主張した。最後にはモントジャさんの自宅を燃やし、土地を強奪。コカイン精製の拠点とするためだ。

逃げるときに持ち出したのはオムツの入ったポーチのみ。モントジャさんは当時妊娠中で、赤ん坊はいつ生まれてもおかしくなかった。「あのとき家にあったものはすべて失った」と振り返る。

友人宅に逃げ込んだモントジャさんは、そこに4カ月滞在。その間に長女を出産した。現在住む土地はギャングから800万ペソ(約27万円)と安価で購入し、家も資材を集めて、手伝いを借りながら自分たちで建てたものだ。ところが正式には政府の所有地であったため、今でも立ち退きを命じられている。

仕事・子育て・NGO副代表

「コロンビア政府に足りないものは、社会的に弱い人や孤独な人を見逃さず、コミュニティに取り入れていく姿勢だ」と強調するモントジャさん。彼女は現在、仕事と子育てのかたわら、社会的弱者・避難民を支援する団体COAPAZの副代表も務める。

社会に見捨てられた人たちがゲリラに加わり、彼らが加害者となって新たな社会的弱者が生まれる。モントジャさんが追求するのは、この負の連鎖を断ち切ることだ。

4児を養うためには週7日でも働きたいが、子どもたちとの時間を優先し、仕事を週4日に抑えるモントジャさん。家族という小さなコミュニティをなにより大切にしているからだ。「子どもたち全員にスポーツをさせるのも、地域や友人という、より大きなコミュニティも大切にしてほしいから」。こう語る母の声は強く優しかった。

モントジャさんの子どもたち。左からアーロンくん(5)、ソフィアさん(13)、ドミニクくん(9)、フリエタさん(14)。モントジャさんの自宅で撮影

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