2歳の息子を連れてコロンビアに移住した母、目標は故郷のベネズエラ風エンパナーダの露店を開くこと

マリルス・ララさん。コメ、煮たフリホル(南米でよく食べられる豆の一種)、ほぐした肉、揚げたプラタノ(調理用バナナ)などを一皿に盛った「パベジョン」というベネズエラ料理が大好物

コロンビア・メデジン北隣の街ベジョの路上でカートを押しながらコーヒーを売る女性たちがいる。そのひとりが、ベネズエラ出身のマリルス・ララのさん(31)。母国の経済危機の影響で生活に困窮し、両親を残して2歳だった息子と2人、2017年に隣国コロンビアへ移住した。食べることが大好きなララさんの目標はコロンビアで故郷ベネズエラ風のエンパナーダ(生地で具材を包んで揚げた料理。揚げ餃子に似ている)の露店を開くことだ。

1日の売り上げは1700円

「息子のために時間の融通が利く仕事を選んだ」というララさん。仕事道具のカートに積むのは、コーヒーに加えて、チョコレートや飴などのお菓子、タバコ、ハーブティーなど。小分けのお菓子3つとハーブティー1杯で2000ペソだ(約70円)。

1日の売り上げは多いときで5万ペソ(約1700円)ほど。ここから仕入れ値を差し引いたものが利益となる。

月の出費は、家賃が60万ペソ(約2万500円)、水道・ガス・電気代を合わせて10万ペソ(約3400円)。食費、通信費、9歳になった息子レオナルドくんの養育費などを考えるとギリギリの生活だ。「家賃は友人や隣人にお金を借りて払うこともある」と言う。

「晴れの日も雨の日も関係ない」と毎日働く。目標は、ベネズエラ風エンパナーダを売る露店の開業資金を貯めること。カートと日よけのパラソル、エンパナーダを揚げるためのフライヤーは用意した。「みんなが買いたくなるようなきれいな外観のお店にしたい」と語るララさん。準備は着実に進んでいる。

エンパナーダはスペイン語圏全域で日常的に食べられ、大きさや具材は国によって異なる。トウモロコシ粉を生地につかい、他国と比べてサイズが大きいのがベネズエラ風エンパナーダの特徴だ。TikTokで世界中の料理を見るのが好きだというララさんだが、故郷の味も忘れられないという。

仕事で使うカート。ベジョには、同じようなカートを押して物を売るベネズエラ人女性は少なくない

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