「薬が必要だった」、てんかんをもつ娘のためにコロンビアへ移住したベネズエラのシングルマザー

2018年に3人の子どもを連れてコロンビアへ移住してきたベネズエラ難民のヤディラ•ムンダラインさん。故郷へ帰りたい、と取材中何度も繰り返した

「すべては娘のため」と語るのは、コロンビアへ移ってきたベネズエラ難民のヤディラ・ムンダラインさん(52歳)。4児の母である彼女は2018年11月に、一足先にコロンビア・メデジン近郊のベジョに移住していた長女を追って入国した。ムンダラインさんには、てんかんと、精神と運動の両方に障がいをもつ30歳の娘ジュルビスさんがいる。

豆しか食べ物がない

ベネズエラでは2018年、年率169万%のハイパーインフレーションが進行していた。食料や医薬品も欠如していた。

「昼ごはんは毎日、豆を食べていた。もっと食べたかったけどそれしかなかった」とムンダラインさん。食料危機が最もひどかった時は、ただでさえ商品数が少ないスーパーの前に朝早くから長蛇の列に並び、食べ物を買った。

またムンダラインさんにとって医薬品の欠如は致命的だった。娘のジュルビスさんは毎日、てんかんの薬と睡眠薬をのむ必要があるからだ。

だが当時は薬を違法に入手する以外方法がなかった。「病院の職員が病院から薬を持ち出し、米ドルで売りつけていた」とムンダラインさんは振り返る。ジュルビスさんが少しでも良い医療サービスを受けられるために、コロンビアへの移住を決意した。

1歳半の孫と嬉しい再会

ムンダラインさんは2018年11月、ジュルビスさん(当時24歳)、三女のエンジャディさん(同16歳)、息子のエンジェさん(同14歳)を連れて故郷のプエルト・デ・ラ・クルスをバスで出発した。

2018年11月21日に、コロンビアとの国境沿いに位置するベネズエラ側の街サンアントニオで降りた。そして検問が開くまで1日待機した。

その後検問を通ると、コロンビア側のククタまで歩き、そこから別のバスに20時間乗ってようやくメデジンに到着した。着いたターミナルには長女と一歳半の孫が迎えに来てくれた。

「孫を見た時、本当に嬉しかった」とムンダラインさんは優しい表情で話す。長女と孫がベネズエラを出たのは孫が生後間もない時。「初めて会ったとは思えないほどとても喜んでくれた」とムンダラインさんは相好を崩す。

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