「薬が必要だった」、てんかんをもつ娘のためにコロンビアへ移住したベネズエラのシングルマザー

2018年に3人の子どもを連れてコロンビアへ移住してきたベネズエラ難民のヤディラ•ムンダラインさん。故郷へ帰りたい、と取材中何度も繰り返した

毎月の生活費は7万円以上?

2022年2月にムンダラインさんは一時在留許可証(PPT)を取得した。そのおかげでコロンビアの公的医療保険制度(EPS)にも入れた。

ただジュルビスさんが必要なてんかんの薬はEPSでカバーできない。30錠入りの箱ひとつの値段は17万6000ペソ(約6000円)もする。この薬をジュルビスさんは毎日4錠のむ。1カ月の薬代は日本円にして2万4000円と高額だ。一生のみ続けなくてはならないという。

ムンダラインさんは今、3人の子どもと、ベジョにある長女の家で一緒に暮らす。1カ月の家賃は80万ペソ(約2万7000円)。これに電気代と水道代を足すと合計110万ペソ(約3万7500円)にのぼる。さらに食費もかかる。足りない生活費を補うため長女とベネズエラ人の夫、22歳と20歳になった三女と長男も学校に通わずに働く。

ムンダラインさん自身ももちろん、仕事をしている。長女が仕事から帰宅した後、孫とジュルビスさんの面倒を彼女に任せて小さな手押し車でコーヒー、お菓子、たばこを売る。だがここにくるまで情けない思いもたくさんしたという。

私は物乞いじゃない

コロンビアに来た当初は、路上で袋に詰めたお菓子を売っていた。「周りからは売り手としてではなく、物乞いとして見られているように思えた」と当時の心境を打ち明ける。

半年後、友人がコーヒーポットを貸してくれた。コロンビア人がコーヒー好きであることに目を付け、コーヒーを売り始めた。少しずつではあったがお金を稼げるようになっていく。ためたお金で手押し車を買い、それを引いてコーヒーやお菓子を売り歩く。

またお金が足りなかったとき、コロンビア人にお金を貸してもらった。だが金利を取られたという。「返済しろ、ととてもしつこかった」とムンダラインさんは語る。

これ以外にも、お金がないゆえに、思い出したくもないような壮絶な経験もムンダラインさんは重ねてきた。

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