「薬が必要だった」、てんかんをもつ娘のためにコロンビアへ移住したベネズエラのシングルマザー

2018年に3人の子どもを連れてコロンビアへ移住してきたベネズエラ難民のヤディラ•ムンダラインさん。故郷へ帰りたい、と取材中何度も繰り返した

家族の重りになってしまう

「彼女(娘のジュルビスさん)は私なしでは生きていけないの」と肩を落とすムンダラインさん。自分の死後、ジュルビスさんの世話をする人がいないことを心配する。

「ほかの家族はみんな働いているからジュルビスの世話ができない。ジュルビスの存在が家族の重りにならないか心配だ」と声を潜める。

「コロンビア政府はコロナ禍のときでさえ何もしてくれなかった」とムンダラインさん。日本のように、政府に頼ることができないのがコロンビアを含む途上国の現実だ。

政権交代したら帰りたい

ムンダラインさんの故郷ベネズエラでは7月28日、大統領選挙が実施された。直前の世論調査では、野党の統一候補のエドムンド・ゴンサレス氏の支持率は83%と圧倒的優位に立っていた。ムンダラインさんは「ベネズエラは変わる。帰れる」と強く思い、喜んでいたという。

ところが結果はマドゥロ大統領の勝利。3選が決まったが、国民のほとんどはこの結果を不正だと信じている。各地で抗議運動が起きた。ただ肝心のゴンサレス氏はスペインに亡命してしまった。

「大統領が仮に変わっても、次の日からベネズエラの状況は良くならない。元に戻るには何十年もかかるだろう。でも大統領が変わればベネズエラは変わる(良くなる)はず。そしたらベネズエラに戻りたい」とムンダラインさんは笑顔で語る。

「私たちを助けてくれたコロンビア人には感謝している」と話すムンダラインさんだが、コロンビアはしょせん異国の地だ。障がいをもつジュルビスさんの世話を誰かにみてもらおうにも、コロンビアにいる限り家族は数えるほどしかいない。50代の女性にとって苦労の数々は想像以上につらいはずだ。

「ベネズエラの家で家族や友人と集まってたくさん話したい」。ムンダラインさんは帰国への思いを募らせる。

ムンダラインさん(左)とてんかんの障がいをもつジュルビスさん(右)。「ジュルビスはとても優しい子」とムンダラインさんは親心を見せる

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