家族の重りになってしまう
「彼女(娘のジュルビスさん)は私なしでは生きていけないの」と肩を落とすムンダラインさん。自分の死後、ジュルビスさんの世話をする人がいないことを心配する。
「ほかの家族はみんな働いているからジュルビスの世話ができない。ジュルビスの存在が家族の重りにならないか心配だ」と声を潜める。
「コロンビア政府はコロナ禍のときでさえ何もしてくれなかった」とムンダラインさん。日本のように、政府に頼ることができないのがコロンビアを含む途上国の現実だ。
政権交代したら帰りたい
ムンダラインさんの故郷ベネズエラでは7月28日、大統領選挙が実施された。直前の世論調査では、野党の統一候補のエドムンド・ゴンサレス氏の支持率は83%と圧倒的優位に立っていた。ムンダラインさんは「ベネズエラは変わる。帰れる」と強く思い、喜んでいたという。
ところが結果はマドゥロ大統領の勝利。3選が決まったが、国民のほとんどはこの結果を不正だと信じている。各地で抗議運動が起きた。ただ肝心のゴンサレス氏はスペインに亡命してしまった。
「大統領が仮に変わっても、次の日からベネズエラの状況は良くならない。元に戻るには何十年もかかるだろう。でも大統領が変わればベネズエラは変わる(良くなる)はず。そしたらベネズエラに戻りたい」とムンダラインさんは笑顔で語る。
「私たちを助けてくれたコロンビア人には感謝している」と話すムンダラインさんだが、コロンビアはしょせん異国の地だ。障がいをもつジュルビスさんの世話を誰かにみてもらおうにも、コロンビアにいる限り家族は数えるほどしかいない。50代の女性にとって苦労の数々は想像以上につらいはずだ。
「ベネズエラの家で家族や友人と集まってたくさん話したい」。ムンダラインさんは帰国への思いを募らせる。