「10分で出ていけ」 家を4度追われたコロンビア国軍元兵士がNGOでやりたいこと

コロンビア国軍の元兵士で、退役後は4度も国内避難民になり、18年前から国内避難民を助けるNGO「COAPAZ」の創設者兼代表として精力的に活動する男性がいる。コロンビア中部のアンティオキア県で生まれ、いまも暮らすハビエル・モントヤさん(63歳)だ。「国内避難民の多くは自分の権利を取り戻せることを知らない。それを実現できるよう手伝いたい」と力説する。

足と腕を切り落とされる

モントヤさんは17歳の時(1978年ごろ)、国軍に入隊した。当時は若かったため見回り任務が多かったという。ゲリラが支配する地域を潜入捜査していた時、ゲリラの拷問を初めて目撃する。

「体を縛って足と腕を切り落としていた。血がなくなるまで放置する。近所の人も集めて『見せしめ』にしていた」

ゲリラに反抗した市民を拷問するさまをモントヤさんは生々しくこう振り返る。

「怖くなかったのか」と尋ねると、「最初はね。一番怖いのは慣れてしまったことだよ」と静かに語る。

銃を突き付けられる 

国軍を2年後に退役してから、モントヤさん自身は4度、ゲリラに脅されて家を追われた。3度は左派ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の兵士が、1度は右派ゲリラのパラミリタレスの兵士が家にやってきて、銃を頭に突き付けられ「10分以内に家を空けろ」と命じられた。モントヤさんは着の身着のままで家を去るしかなかった。

「自分の持ち物や、自分の農園で栽培していたコーヒーやサトウキビを放置していくのが辛かった」とモントヤさんは悲しげに話す。

コロンビア内戦は2016年、コロンビア政府とFARCが和平合意文書を交わしたことで、50年以上に及んだ内戦に一応は終止符が打たれた。だが多くの国内避難民はいまだにコロンビア政府からの支援を受けられず、貧しい生活を余儀なくされている。

「内戦の被害者は、自分たちがどんな権利をもっているのか、どこに頼ればいいのかを知らない」(モントヤさん)

そこでCOAPAZは、国内避難民一人ひとりの生活事情や、過去に何が起きてどう逃げてきたかといったストーリーをヒアリングし、コロンビア政府と国内避難民の間に入り、被害者が金銭的援助や奪われた土地を取り戻せるよう橋渡しをする。モントヤさんによれば、これまでコロンビア政府からの金銭的援助を受け取った人の受け取り額は1人当たり40万~80万ペソ(1万3600~2万7300円)とさまざまだという。

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