ベネズエラの反政府活動家「マドゥロは大嫌い」、コロンビアに避難してもデモは続ける

カリートでコーヒーを売るラミレスさん(コロンビア・メデジン近郊のベジョで)

マドゥロのせいで体重26キロ減

「マドゥロ(大統領)に反対して殺されるならそれでも構わない。それぐらい嫌いだ」(カルメンさん)

この言葉からもわかる通り、カルメンさんのマドゥロ政権を打倒したいという信念は強い。ラミレスさんによると、ガイタ(ベネズエラのクリスマスシーズンに流される曲のジャンル)の歌い手だった姪はチャビスタ(体制派)の州知事に気に入られお金をもらっていた。それが分かるとラミレスさんは姪のフェイスブックアカウントをブロックするほどだ。

そんなラミレスさんに悲劇が襲い掛かる。反政府運動をしていたことが知られ、国立大学に通っていた長男の奨学金が打ち切られた。それだけでなく、母(ラミレスさん本人)が右派政党の党員だという理由で、当時4歳だった次男は公立の幼稚園を退園させられた。

また、ラミレスさんの家から3軒先の家には政府関係者が住んでいることから、彼女に関する情報が筒抜けということもあり、反政府デモに参加する彼女が逮捕されるリスクは高い。

2019年になるとベネズエラのインフレ率は9585%に。スーパーマーケットに食べ物はなく、高い値段で取引される闇市でしか食材を手に入れることができなくなった。

水道水は安全ではないため、「私たち(ラミレスさんと息子2人)は8カ月間、水を飲まずに、自宅に生えていたマンゴーの実を食べていた」と話す。「その時のトラウマで下の息子は今でもマンゴーが食べられない」(ラミレスさん)

体重は43キログラムまで落ちた。ベネズエラではこうした人が相次いだため、現地ではこれを「マドゥロ・ダイエット」と呼ぶ。ラミレスさんはコロンビアに来てからは26キログラム増えて69キログラムとなった。

政治的に弾圧を受けていて命が危ない。食料がない。この状況を打破するためにラミレスさんは息子2人をベネズエラに残し、ひとりでコロンビアに行くことを決意した。

毎月6800円を母国へ送金

2019年12月1日、スリア州からコロンビアに向けて出発した。

スリア州からコロンビアとの国境までは、コロンビアからベネズエラにトラックでコメや小麦粉、豆などを売りに来るコロンビア人に30ドル(約4300円)を払った。国境を越えた後、午前2時ごろ、国境近くのコロンビア側の町マイカオに到着。寒空の下で3時間待機した後、メデジン近郊のベジョに住む知り合いが送ってくれたお金でバスチケットを買い、ベジョにやってきた。

ラミレスさんは到着して数日後から働き始めた。一番初めの仕事は、カロース・デ・コミーダ(小型の移動式キッチン)の洗浄。ところが2020年3月から広まったコロナ禍で、外に出て商売する人がいなくなってしまった。そのため、コロンビア政府がパンデミック(感染爆発)と宣言した17日後、コーヒー売りへと転身した。

現在はベジョでカリートを引きながら1杯1000ペソ(約34円)のコーヒーを売る彼女は1日に50杯売って5万ペソ(約1710円)を売り上げる。1カ月で150万ペソ(約5万1250円)。ここからインスタントコーヒーの粉や砂糖、カップなどのコストを引いた額が収入となる。

ラミレスさんはいま、ほかのベネズエラ人3人と一緒にシェアハウスで暮らす。1カ月の家賃は35万ペソ(約1万2000円)、光熱費は30万ペソ(約1万200円)だ。またベネズエラに残してきた2人の息子のために毎月20万ペソ(約6800円)を送金する。

残るのは約54万ペソ(約1万8300円)。このお金で、食料や洗剤などの生活消耗品を買ってやりくりしなければならない。ベネズエラにいる息子たちに会うためのバスチケットは往復で80万ペソ(約2万8000円)かかるので、貯金は難しい。

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