ベナンの伝統服ボンバを残せ! 洋服の普及の波に抗う女性がいた

ベナン南西部のトタ村で仕立屋を経営するプルシェリ・カカさん(左端)と見習いたち(店内で撮影)。カカさんは「ベナンの伝統服ボンバを残したい」との強い思いを抱く

ベナン南西部のクッフォ県ドボ市トタ村に、伝統服ボンバの仕立屋を経営する女性がいる。プルシェリ・カカさん(45歳)だ。ベナンでは自分で購入したパーニュ(アフリカ布)を仕立屋に持っていき服を作ってもらうのが一般的だ。「伝統服ボンバを着る人が近年は減り、悲しい」と彼女は嘆く。

たった5年で収入が3分の1に

カカさんの仕立屋の名前は「アぺジェ・クチュール」。店を開いて25年になる。週6日、1日12時間働く。1週間の顧客の数はおよそ10人、1カ月では43人ほどだという。

一番人気の商品はボンバ。もちろんボンバ以外に、ズボンやワンピース、スカートも作る。

カカさんが仕立屋になる道を歩み始めたのは10歳のとき。「服を作るのが好き」というのが理由だ。ディビン・クチュリエという仕立屋で8年修業をした。

ベナンでは洋服の普及でボンバを着る人は年々減っている。その影響から仕立屋で服を注文する人も右下がりだ。「5年前と比べて、1週間に店に来る客は20人以上少なくなった」とカカさんは説明する。

ボンバ離れとともに、収入も減少傾向にある。ひとつの服を仕立てて得る利益は約1000CFAフラン(約240円)。1週間の収入は約1万CFAフラン(約2400円)だ。5年前から客が20人以上減ったことを踏まえると、1週間当たりの減収額は2万CFAフラン(約4800円)以上になる。

今後さらに収入が減ったとしても、カカさんは「この仕事を続けたい。服を仕立てることが大好きだから」と笑う。

日本人御用達の仕立屋

ボンバの文化を残すためにカカさんは自分なりのデザインを日々考案している。例えばビーズで花型の装飾をつくるデザイン。「ボンバを着たいと思ってもらえるように、魅力的で美しいボンバを作りたい」とカカさんは話す。

トタ村在住の日本人女性は「私が持っているボンバはほとんど、カカさんに作ってもらった。7、8着くらいかな。他の仕立屋も試したけれど、カカさんの店が一番仕上がりが良い」と絶賛する。

カカさんは注文通りの服を完璧に仕立てる。ベナンの女性は身体の線を強調させるような、ぴったりとした服を着ることが多い。対照的に日本人女性は身体の線を拾わない、ふわっとした服を好む。カカさんは、見たことのない日本スタイルの服でも完璧に作るという。

トタ村を訪れた日本人女性のほとんどはアぺジェ・クチュールで服を仕立てる。「思っていた通りの服になる」と評判だ。

カカさんの仕事の良さは仕上がりだけではない。服を仕立てるスピードの速さも彼女の売りだ。ボンバは半日で、ワンピースは6時間で完成させるという。

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