“ブードゥー医学”は最後の救い、なんでも治せる最高指導者がベナンにいた!

左がブードゥー教のシェフのエケ・アドトビ氏。歓迎のためにブードゥーの薬を振る舞う。エケ氏が育てた薬草を煎じたもの

西アフリカのベナンの田舎では、医師の役割を担うのがブードゥー教のシェフ(最高指導者)だ。同国南西部のクッフォ県トタ村とクッフォ県全体のシェフを務めるエケ・アドトビ氏(70)もそのひとりだ。「お祈りや薬草の調合でなんでも治せる」というから驚きだ。

「てんかんも治療できる」

エケ氏が治療するのは、頭痛、腹痛、マラリアなどの病気だけではない。悪夢や“気が触れた状態”といった精神疾患もカバーする。驚くべきは、脳の病気である「てんかん」も治せると彼が言っていることだ。

治療方法はまず、悪夢や気が触れる病気、てんかんなどに対してはお祈りをする。こうした問題を抱える人たちのことをベナンでは「グリグリをかけられた状態」だと考える。ベナンにはいまだ、「グリグリ」と呼ばれる呪いのやり方が根強く残っている。グリグリをかけられた人は不幸になると信じられ、心身に不調をきたす。「それを解く必要がある」とエケ氏は説明する。

グリグリを解くにはシェフのブードゥーパワーが必要だ。シェフがお祈りすることで、グリグリの呪いを払える。

お祈りが効かない場合、薬草を使った薬を作り、それを処方するという。「薬草の中身は秘密。だが治せない病気はない」(エケ氏)。シェフはさまざまな薬草を作る畑を持っているという。

治療期間は、頭痛や腹痛などの軽い症状は約1日。マラリアは約3日、悪夢が約4日、気が触れた状態は1週間。てんかんは難しくて2カ月かかるという。

悪夢に悩んでシェフにかかる

てんかんは西洋医学では、発作を抑えるためにほぼ永遠に薬を飲み続けなければならない。だが“ブードゥー医学”では完治するという。エケ氏は「てんかんの治療を終えた患者が同じ症状でまた訪れることはない」と断言する。

エケ氏を訪れる患者の中で最も多いのが「悪夢」に悩まされるケースだ。その数は1日3人程度。1日の来訪者が平均10人であるため、約3割を占める。これ以外にも、「気が触れた状態」で訪れる人も少なくないという。彼らはすぐにシェフにかかる傾向にある。

ソダビにいろんな薬草を漬けたベナン版養命酒。多くの家庭にあり、それぞれ入っているものが少し違う。シェフからいただいたソダビはかなり多くの薬草が入っていた。画像のソダビは一般家庭にある簡易なもの

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