ベナンのフォンコメ村に女性初のブードゥー教最高指導者がいた!「神から結婚の許しを得た」

フォンコメ村で初めての女性シェフ(ブードゥー教の最高指導者)を務めるアケナジェ・アゾイヌ・メネさん(白い衣装を着た中央の女性)。ブードゥー教の儀式で村人と一緒に踊る

神がシェフの夫に嫉妬

ブードゥー教の男性のシェフは妻を複数もつことが一般的だ。ある村の男性シェフには妻が8人いるという。

対照的に女性のシェフは結婚できないとされる。「シェフになったら神様と結婚することになる。また、男性より女性のほうがブードゥーのパワーが強い場合、男性は女性にパワーを吸いとられ、やつれてしまう。だから女性のシェフは結婚できない」とブードゥー教に詳しいベナン人は説明する。

メネさんはシェフになる前にすでに結婚していた。そのためシェフになると決意したとき、結婚したままシェフを務めることを、ブードゥー教の水の女神「マミワタ」に「許してほしい」とお願いしたという。

「夫のことが好きだから離婚したくなかった。それに子どもももっと欲しかった」(メネさん)

メネさんが離婚せずにシェフを務められるのには、もう1つ理由がある。それは、メネさんの夫もブードゥーのパワーが強いからだ。それゆえに、メネさんと結婚していても夫はパワーを吸いとられてやつれることがないという。

ただメネさんが、マミワタと夫の2人と平和な結婚生活を過ごすための条件が1つある。それは、それぞれと会う日を1週間の中で分けていることだ。

マミワタと会うのは毎週金曜日と日曜日。といってもマミワタは水の女神なので、時を過ごすのは夢の中。マミワタは人間の形をしているという。

メネさんがマミワタと会う日またはブードゥー教の儀式がある日は、夫に限らず男性はメネさんに触れることはできない。「マミワタが嫉妬するから」とメネさんは説明する。

「マミワタが嫉妬して、夫と離婚してほしい、と今でもよくお願いされる」(メネさん)

シェフは7児の母

メネさんがいま最も頭を悩ます問題は金欠だ。夫は農業をしていたが、年で体が弱っているため現在は何もしていない。

メネさんは「ブードゥー教の儀式とこの村をより良くしたい。でも、そのために必要なお金が十分にない」と語る。訪ねてくる村人のために大きくてきれいな家を建てたいという。必要なお金は500万CFAフラン(約123万円)。

お金を貯めるために、メネさんは自分の畑で育てた薬草を売る。畑の半分では、シェフとして薬を調合する際に必要な薬草と家族が食べる野菜を育てる。もう半分は外部に売るための薬草だ。薬草を売るのは1年のうちほんの1時期だけ。4万CFAフラン(約9800円)しか稼げないという。

「女性シェフは普通結婚できない。だから女性でシェフを務めることは確かに大変。でもシェフになったことに悔いはない。不思議な体験はなくなったから。おかげでいまは子どもが7人いる」とメネさんは嬉しそうに話す。

メネさんがシェフを務めるブードゥー教の一派は、水の女神「マミワタ」をまつる。写真は儀式で使う道具だ

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