【ラオス無法地帯を行く⑦】路上に整列する風俗嬢、ここは中国人のための赤線地帯だった

ピンク色に照らされた置屋の店内。入り口は大きなガラス扉になっており、外からも女性を品定めできる

蘇る中国の性サービス

置屋の看板を見るとよく目にする文字がある。

「莞式」

これは東莞という場所でかつて提供されていた中国の伝説的な性サービスのことだ。

東莞とは深圳と広州の間にある都市。1980年代から衣料品、日用雑貨、電子製品の生産が拡大し、労働者が増加した。それととともに性産業も発展。2010年代には「性都」と呼ばれるほどになった。

この東莞の莞式は「ISOサービス」とも呼ばれる。ISO基準とは国際的な工業製品の規格。工業が盛んな東莞にちなんで、世界基準の性サービスを保証するというキャッチフレーズだ。サービスを向上させるため、客に採点してもらっていたほどだった。

だが2014年に習近平政権は東莞の風俗を一斉摘発。莞式サービスは中国から姿を消した。

この絶滅した性サービスがゴールデントライアングル経済特区で受けられるのだ。中国人が高いお金を出して、ここに来るのはそんな事情がある。

タイではベトナム戦争の時代に、米兵を保養するために多くのゴーゴーバー街ができた。バンコクのソイカーボーイやナナプラザ、パッポン、パタヤのウォーキングストリートは有名だ。戦後の好景気の中、日本人はバンコクのタニヤに日本人街を作った。そこには日本式の居酒屋やキャバクラ、カラオケなどが立ち並ぶ。私もかつて行ったことがあるが、女の子はみんな、流暢に日本語を話していた。

時代によって東南アジアの街は変わっていく。ここゴールデントライアングル経済特区は、中国が隆盛を極める今の時代に作られた街といっていいだろう。

「莞式」と書かれた置屋の看板。ゴールデントライアングル経済特区の置屋では、中国で絶滅した莞式性サービスが受けられる

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