【ラオス無法地帯を行く⑧】風俗嬢の取り分は4割、「ここで働く以外に選択肢はない」

激辛鍋を食べる風俗嬢のティップ。彼女は4カ月前からゴールデントライアングル経済特区の置屋で働く

2万円のみかじめ料

ティップの話によると、この置屋で働く女の子は22人ほど。全員がラオス人。店を仕切るママとオーナーは中国人だという。

この置屋の料金はショートが500元(約1万円)、ロングで1500元(約3万円)。これはバンコク並みの価格だ。

取り分を聞くと風俗嬢と経営側で2対3。1人の客から風俗嬢は1回のショートで200元(約4000円)を稼げる計算だ。4割の分け前は不公平にも思うが、それでも1時間ちょっとの仕事で200元はラオスでは破格だろう。

ティップは言う。

「私はだいたい月6万バーツ(約24万円)は稼いでいる。18万バーツ(約72万円)を稼ぐ子もいるよ」

24万円といえば、月3万円といわれるラオス人の平均月給のおよそ8倍。タイの平均月収と比べてもおよそ3.5倍だ。こんな大金を稼いでしまうとはゴールデントライアングル恐るべし。

だが実際は良いことばかりではない。私の横で激辛鍋をつついていたもう1人の風俗嬢ティアが話し始めた。

「ここには基本給がない。10人のお客さんを相手にする日もあれば、昨日なんかゼロ。収入が安定しているわけではない」

ティアの不満は続く。

「お金が一番かかるのは警察に毎月払うお金。(女の子1人につき)5000バーツ(約2万円)もする」

ティアは「警察」(ラオス語でタムルアット)という単語を使ったが、ゴールデントライアングル経済特区にラオス警察は基本的に配置されていない。警察とは、中国のカジノマフィアであるキングスローマンズグループが手配した用心棒だろう。5000バーツはここで働くためのみかじめ料と考えたほうがいい。

ここで働く22人の風俗嬢がみんな5000バーツを払ったら、用心棒たちは何もせずに毎月11万バーツ(約44万円)を懐に入れることが可能だ。経済特区という無法地帯を利用した汚いシステムだ。

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