5人に1人が感染する「結核」、途上国出身者を都内で診療する日本人医師がいた!

カンボジアでWHOが実施したWHOの第3回有病率調査。ヘルスボランティアらと家庭訪問をする内科医の高柳喜代子さん(左から3人目)

フィリピン・ベトナムが多い

日本でもかつては「不治の病」と恐れられた結核だが、「低蔓延国」(10万人あたりの患者数が10人以下)の仲間入りをしたのは2021年。つい3年前のことだ。いまは罹患率8.2人に低下した。

それでも毎年1万5000人が新たに感染し、およそ2000人が死亡する。結核患者の半数は70歳以上の高齢者だが、若者もいる。

特徴的なのは、日本の結核患者のおよそ1割を外国人が占めていることだ。国籍別にみるとフィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、中国、ミャンマーの順に多い。最も多い年齢層は20代だ。海外からやってくる結核患者の数は2018年をピークに減っていたが、コロナ禍の後は増加に転じているという。

途上国出身の結核患者を都内の「結核予防会 総合健診推進センター」で診察・治療するのが高柳さんの仕事だ。ビルマ語、ネパール語、中国語、英語、ベトナム語の5カ国語に対応する医療通訳と協力して進める。

外国人の結核患者は不慣れな海外で感染したことで不安になるうえに、周囲からは偏見を受けて社会から孤立してしまいがちだ。日本では感染症法の規定で、結核の治療費のほとんどを国や都道府県が負担し、入院費用もかからないことがあまり知られていない。

高柳さんは「治療費の支払いを心配せずに、薬を正しく飲めば治る病気だと理解すること、社会とのつながりを取り戻すことが結核の治療には欠かせない」と話す。

「結核を発見するために職場、日本語学校、地域での定期健診のほか、途上国に関連するさまざまなイベントで実施する『出張検診』も受けてもらいたい。そのためには、検診がいつどこであるのかといった情報を漏れなく伝えるサポートも必要だ」と高柳さんは協力を呼びかける。

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