マダガスカルの「ドゥアニ信仰」がいま熱い! 巡礼に訪れる外国人も

ドゥアニの社殿前で憑依状態となり、精霊として振る舞い、踊る宗教的リーダー(霊媒)

フランス人にも憑依

ドゥアニ信仰はまた、マダガスカル人以外にも開かれた宗教だ。

ドゥアニ信仰では王様、占い師、石など多種多様なものを祀る。異なる民族の信者もいて、江端さんは「(マダガスカルの東800キロメートルに位置するフランスの海外県のひとつである)レユニオン島のフランス人がドゥアニ信仰のリーダーとして、信者を引き連れてマダガスカルへ巡礼しに来ることもある。近隣国のお金持ちが多い」と話す。

「(フランス人だけでなく)民族、宗教(ドゥアニ信仰の信者以外も)、国境を越えて多くの巡礼者がやって来る」と江端さん。特に人気の行き先は、ドゥアニ信仰のもとになる伝統宗教が生まれたメリナ王国があった、マダガスカル中央高原のイメリナ地方だ。巡礼者が増えていくことで寄付も増え、木や岩だけを原料にした簡素なドゥアニから、建物(社殿)を備えた立派な作りになるなど、聖地は発展していくという

ドゥアニ信仰ではさらに、巡礼者もドゥアニで精霊(王様や占い師など)からお告げを聞く儀式に参加できる。祀っている精霊が外国人の巡礼者にも憑依し、「憑依された外国人はカタコトでマダガスカル語を話し始める」と江端さんは言う。

精霊を憑依させた状態で、薬を調合する伝統治療師もいる。精霊に近い場所(ドゥアニ)で患者を治療すると、より高い効果が得られるといわれる。 

憑依の儀式で舞い降りた精霊の承認をもとに、マダガスカルでは今も神話が創造され、新たな聖地が生まれる。古くて変わらない日本の神道が「静」であれば、マダガスカルのドゥアニ信仰は「動」だと江端さんは表現する。

アニメのキャラになった精霊も

共通点が多いマダガスカルのドゥアニ信仰と日本の神道だが、異なる点もある。マダガスカルでは、乾いた遺骨や捧げ物の牛の血は神聖なものとして扱われるという。

マダガスカルではまた、日本の影響で、日本のアニメキャラのような外見に変化した人魚の精霊も祀ってある。江端さんによれば、ベナン発祥のブードゥー教の精霊のひとつ「マミワタ」(水の女神)もキリスト教やヒンドゥー教の影響を受けているという。

巡礼に来たレユニオン人の宗教的リーダー(霊媒)と信徒集団が牛を供犠してドゥアニに捧げる

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