数学の平均点が日本の半分のケニアの高校生、“トリリンガル” は負担となるのか

筆者の数学の授業中にスワヒリ語とカンバ語で説明し合う生徒たち

JICA海外協力隊員として私がケニア南部のマクエニ県ンジウ村で教鞭をとる高校では、生徒の数学のテストの平均点が30〜40点。私が数学教師をしていた日本の公立高校では60〜70点だったからその半分だ。その理由は何なのか。「部族語・スワヒリ語・英語」の3つの言語を学ぶことがケニアの生徒に大きな負担となっているのかもしれない。探ってみた。

スワヒリ語で説明して!

私が作る数学のテストは、基礎的な計算力の問題、簡単な文章問題、思考力を問う問題の3つで成り立つ。思考力を問う場合、たとえば半円柱の表面積を求めるものがある。答えを導き出すには、まず半円の面積を求め、次に側面の長方形の面積を計算し、この2つを足す。日本では中学1年生で学ぶ内容だが、3つの問題すべて正解する生徒は、日本の高校(偏差値40程度)では40人中10人程度、ケニアでは40人中1人いるかいないかだ。

ンジウ高校の生徒数人がある日、半円柱の表面積の求め方を私に質問してきた。英語で説明したところ、生徒のハロンさん(15歳)は「英語ではなく、スワヒリ語で説明してほしい」。「なるほど」と私は思い、流ちょうなスワヒリ語で説明してみた。ところがハロンさんは「う〜ん、スワヒリ語でも難しい」。ちなみに彼の英語とスワヒリ語のテストの点数はともに100点中10点ちょっとだ。

ケニアの高校では必ず英語で授業をしなければならない。だが生徒の約8割は英語を完全に理解していない現実がある。スワヒリ語も、ンジウ村の人にとって母語ではない。ここはカンバ族が多く、ふだんはカンバ語を使う。早い話、英語は第3言語なのだ。 

ちなみにケニアには約40の民族がいる。カンバ族はケニアで5番目に多い。ただカンバ族の境遇は地方であればどこも同じ。生活ではその民族の言葉やスワヒリ語を話し、授業中だけ英語となる。

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